無声映画のシーン

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  • サイズ B6判/ページ数 262p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784864910057
  • NDC分類 963
  • Cコード C0097

内容説明

この30枚の写真は、ぼくが切なく楽しい少年時代に帰る招待状だった。『狼たちの月』『黄色い雨』の天才作家が贈る、故郷の小さな鉱山町をめぐる大切な、宝石のような思い出たち。誰もがくぐり抜けてきた甘く切ない子ども時代の記憶を、磨き抜かれた絶品の文章で綴る短篇集。

著者等紹介

リャマサーレス,フリオ[リャマサーレス,フリオ][Llamazares,Julio]
1955年、スペイン北部、レオン県のベガミアン村で生まれる。2年後、同じレオンの鉱山町オリェーロスに移り幼少年時代を過ごした。その頃の記憶に基いて小説に結晶させたのが、『無声映画のシーン』(1994)である。マドリッド大学法学部を卒業後、弁護士、ジャーナリストを経て、詩人・小説家として活動をはじめる。紀行文、エッセイの卓越した書き手としても名高い

木村榮一[キムラエイイチ]
1943年、大阪市生まれ。神戸市外国語大学名誉教授。現代ラテンアメリカ文学の精力的な紹介で知られる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

アン

89
著者が少年時代に暮らしたスペイン、オリェーロスの鉱山町での写真。その写真を眺めていると、命を得たように人々が動き出し、風景と共にその時代の町の姿が浮かび上がってきます。まるでサイレント映画のように。記憶の中に宿る写真の光。写真が紡ぐ物語はメランコリックで、町を象徴する雪の白と炭鉱の黒のコントラストは深く心に残ります。「写真は星のようなもので、たとえ彼らが何世紀も前に死んだとしても、長い間輝き続ける」著者の故郷への大切な想いが伝わる作品です。 2019/05/03

(C17H26O4)

85
子供の頃に撮られた写真から立ち上がるストーリー。その一コマ一コマを見るだけで、切り取られた一瞬だけではなく、周辺の時間や人物が動き出す。正しい思い出も、脚色された思い出も。静かで淡々とした文章だが、ぼくが鉱山町で過ごした日々が、写真を見るという行為から浮かび上がってくる。読みながら、実家に置きっ放しの自分の古いアルバムを開いているところを想像していた。写真の中で地面は広がり空は高くなり、そこに写っていない建物や木々まで見えてきた。自分のストーリーが少しの間動いて、また静止した。2019/04/06

nobi

74
スペインの「山間(やまあい)に身を潜めている」オリェーロスで少年時代を過ごした十二年間の記憶あるいは小説。廃坑に向かう鉱山町のシーンには色がない。無声映画とあるように声も聞こえない。ただ、彼はいつも「何かをじっと見つめ」ている。そこには落盤事故での、力の衰えを感じた旅芸人の、バイク自損事故での、楽団の交通事故での、ケネディ大統領の、等々多くの死のシーンがあり、隣り合うように光のシーンがある。初めてオリェーロスを出て何時間も車で走った後に突然姿を現した青く輝く海。洗礼盤に映っている大聖堂のステンドグラス…。2021/12/22

キムチ27

67
筆者が過ごした濃密な記憶の中にある情景を「写真」と称し ジグソーのピースを合わせて作り上げたフィクション。筆者の想いは短編集とよばず、訳者が評する様に小説。読みつつ 私も「あれ!これ、知ってる」という感覚に揺れ出す・・地球の反対側の場所で筆者がこの空気を吸っていたんだという感慨は愉しい。オリェーロスは鉱山の町・・黒と白の2色・・粗暴と過酷。半分以上の章は「○○は野垂れ死んでいた」みたいなエンド。だが少年は生きる知恵を貰った。。ラスト フランコ政権についての語りは子供ながら骨がある・・して父の光が消えゆく2020/09/17

miyu

57
「問うべきは死後に人生があるかどうかではなく、死ぬ前に人生があるかどうかである」こんな語り始めのフレーズから魅了される。モノクロ写真を巡る遠い過去の記憶。それは些細で他人にとっては取るに足らない、そんなちっぽけな風景なのかもしれない。世代も国も違う彼の語る思い出を、私はただ想像する。それがこれほどまでに私の意識の奥に響くのが不思議だ。誰にでも語られるべき思い出はある。ただ心にしまうだけ。語る術がないだけ。詩人はそれを暖かい瞳で、迷いもなくさらりと口に出してみせる。まるで私たちが見てきた自分の過去のように。2015/02/07

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