出版社内容情報
“ポスト・ギャディス”と目され、リチャード・パワーズが正体とも噂された、トマス・ピンチョン以上に謎めく、ポスト・ポストモダン作家エヴァン・ダーラ――“読まれざる傑作”として話題となった、ピリオドなしの、無数にして無名の語りで綴られる大長編の奇書がついに本邦初訳で登場!
内容説明
“ポスト・ギャディス”と目され、リチャード・パワーズが正体とも噂された、トマス・ピンチョン以上に謎めくポスト・ポストモダン作家エヴァン・ダーラ―“読まれざる傑作”として話題となった、ピリオドなしの、無数にして無名の語りで綴られる大長編の奇書がついに本邦初訳で登場!
著者等紹介
ダーラ,エヴァン[ダーラ,エヴァン] [Dara,Evan]
本名、年齢ともに不詳。フランス在住か。1995年、デビュー作『失われたスクラップブック』が、ポストモダン作家ウィリアム・T・ヴォルマンによってFC2賞に選ばれる
木原善彦[キハラヨシヒコ]
1967年、鳥取県生まれ。京都大学文学部卒業、同大学院文学研究科修士課程・博士後期課程修了。博士(文学)。大阪大学大学院人文学研究科教授。専門は現代英語圏文学。訳書にウィリアム・ギャディス『JR』(国書刊行会、第五回日本翻訳大賞受賞)などがある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ヘラジカ
52
それなりに本を読んできたつもりでも、未だに似ている作品を探すのが難しい小説に出会って驚嘆することがある。この大長編はまさしくそんな奇書の一つだ。句読点が(ほぼ)ないポリフォニックで混沌とした作品ではあるが、奇妙や不思議という言葉だけで形容するのは不可能なほど強烈な物語とメッセージを有している。無秩序に見える大海に放り出され溺れそうになったが、なんとか泳ぎ方を覚えてからは場面が「跳ぶ」瞬間に快感を覚えるようになった。複雑な構造のなかに単純な面白さもある。核心が明らかになるラストは圧巻。途方もない傑作である。2024/11/29
かふ
17
日本翻訳大賞だから読んでみる。アメリカのポストモダン小説で一人称の語り手は趣味的なサブカル野郎という感じなのだが政治的には希薄なのに最後は政治的に汚染されているというような。トランプ時代のアメリカなんだろうと思った。作者の視線がクールなのだが、それはトランプのようなアメリカを許してしまう。途中まで読んだけどそんな感想でいいか?図書館本なんで返却しなければ。5千円以上もするんだ。買うのも躊躇われるが。本の値段も上がっている。2025/08/10
おだまん
13
リチャード・パワーズを初めて読んだときの衝撃。これはまたヘビーなものを読んでしまった。間に合ってたら日本翻訳大賞に推したかったな。タイトルのようにスクラップのように荒唐無稽に散りばめられた(と思われた)断片がラストに向かって怒涛のように形になっていく過程がもう、たまらない。2025/02/20
29square
7
リチャードパワーズ覆面作品とも噂される同作。主語を極力排して意識の流れを点描形式で描く攻めたスタイル。通底する沈痛な感覚、ストレートに言うなら陰キャな語り。パワーズだとしたら鬱の時に書いたのか? 寧ろ、前半はカーヴァー作品のような倦怠と穏やかな痛み。後半はギャディス作品のような喧騒と刺激痛。そう考えると現代アメリカ文学のコラージュ或いはサンプリングミュージックと云えなくもないが、この混沌は到達点なのか極北なのか。それにしても重い(物理的に)。2025/08/09
ケント
7
人生の記憶に残る作品を読んだ。 物語の前半は岸雅彦氏の「東京の生活史」のような市井に生きる見知らぬ他人の人生を、それこそスクラップブックに貼り付けて一つに繋ぎ合わせているよう。読む人によって印象に残る語り手が居ると思う、自分の場合安いドラムセットを買ってしまった父の話が心に残る。 その話があるからこそ後半の展開がすごく胸にくる、名もなき人々の生活を容赦なく打ち壊す大きな力。 恐がらずに読んでほしい本。2025/01/07
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