感想・レビュー
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月音
4
地の底から湧きあがり、這いずる濁音のリズムが蚕（かいこ）の糸となって絡みつく。桐生の機屋（はたや）の娘である詩人の母、祖母、大船渡・気仙沼のおんばたち、津軽の巫女の語り口がまじりあう不可思議な土地のことば、その響き。濃密な土のにおい、脂じみた汗のにおいと湿った黴のにおい、産と月の血のにおいが立ちこめ、土に還りゆく死の沈黙と地にうごめく再生の鼓動が重なる。女たちが着せたオシラサマの着物の地層をかきわけた奥の暗がりに、母の繭にくるまれた胎児の幻がゆらりと浮かんだ。⇒続2025/02/02
