出版社内容情報
『ウンディーネ――水の妖精』の詩人が書いた大ベストセラー小説が、210年の時を超えて蘇る!――『指輪物語』『ナルニア国物語』の先駆となった冒険ファンタジー小説の原像。汎ヨーロッパのヴィジョンを夢幻に繰り広げた、力と美の奔出する中世騎士道絵巻。本邦初訳。原著全3部のうち、第2部後半から第3部最終章までを収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
syaori
74
下巻では、魔法の指輪を巡る決闘から出会い、旅立ち、それぞれ北欧やスペインを遍歴していた登場人物たちが、再び始まりの地に会します。凍てつく北欧での異教徒との戦い、ハルツ山地の地下宮殿や噴水が銀の飛沫を上げるムーア人の宮殿での冒険に登場人物たちの典雅な恋や悩みが絡む旅路から様々に謳われた一人の豪勇の過去が立ち上がり、それらが渾然一体となってドナウ河畔の大団円へと収斂されてゆくさまはさながら優美な「花輪」が編み上げられてゆくよう。「恋をし、憧憬れ」「海を渡りて、血戦に身を捧げる」騎士たちの物語を愉しみました。2023/11/28
彩菜
29
彼方へ、彼方へ、そしてオットーは再び指輪に導かれるように自分の城へと戻ります。老いた父の待つその城は指輪に秘められた古い愛の墓場でもあるのです。…最後に輝くポエジーの王冠が示す通り此処は愛と詩の王国なのでしょう。戦士であると同時に恋する者であり詩人でもある騎士達、愛の天上的な力による美しい飛躍があり、鏡・双子・生き写し、彼等の対立と葛藤のイメージは和解へ、冷たい愛の墓場からは新たな愛が芽吹きます。死と再生のモチーフがあり愛と理想へ上昇する鮮やかなイメージがあり、その中に遊ぶのは非常に楽しい事でした。2024/01/15
星落秋風五丈原
22
タイトル通り奪われた指輪をめぐる話。といえばあのファンタジーを思い出す。下巻解説に時代から取り残されていく著者の悲哀が描かれる。2023/08/29
tieckP(ティークP)
11
騎士同士のわちゃわちゃで導入する第1部を経て、分かりやすい伏線で感動を誘う第2部、そして騎士が戦う面白さではないものの、ゼウスを思わせるような広い血脈を元にした神話のような汎ヨーロッパ的な結末へと辿り着く叙事詩的第3部とそれぞれに魅力があり、まあヘールデーゲンの扱いとか、アルヒムバルトの謎の立ち位置とか「完璧」な構成ではないけれども、小説としての魅力は非常に大きい。文体も読み易さと時代性の両立を考えれば見事。訳註・解説は特に和泉氏の部分が(哲学でなく)ロマン主義文学への博識ぶりに頭が下がる。重要な本。2023/04/06