内容説明
パス、フエンテス、パチェーコらラテンアメリカ文学の巨匠に激賞された政治家・作家グスマン―作家みずから体験した政争、暗殺事件を題材に、首都メキシコシティで繰り広げられる、血なまぐさい政権抗争と人間の悲哀を描く“メキシコ革命小説”の白眉。本邦初訳。
著者等紹介
グスマン,マルティン・ルイス[グスマン,マルティンルイス] [Guzm´an,Mart´in Luis]
1887‐1976。メキシコ・チワワ生まれの作家。メキシコシティで法学を修めた後、先鋭的知識人グループのアテネオに参加し、ジャーナリズムに従事。メキシコ革命勃発後、1913年にパンチョ・ビジャの北軍に合流、文民として彼の顧問役を務める。革命政権発足後、何度も政争に巻き込まれながらも、自らの理想を貫き、スペインとアメリカ合衆国で二度の亡命生活を余儀なくされる
寺尾隆吉[テラオリュウキチ]
1971年、名古屋市生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了、学術博士。現在、早稲田大学社会科学総合学術院教授。専門は二十世紀のラテンアメリカ小説(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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てれまこし
6
「メキシコの政治はピストルの政治、先んずること、それがすべてです。」かつては革命をともに戦った盟友たちが、大統領選をめぐって血で血を洗う抗争を繰り広げる。民主主義のファサードの裏にあるマキァヴェリアンな仁義なき政治が頭をもたげる。義を重んじボスに忠誠を誓うアギーレ将軍もこれを避けえない。自分にその気がなくても周囲が許さない。何もしなくてもライバルが放っておかない。友情や忠誠心は犠牲にし、与えられた役割を演じるしかない。「台詞を覚えよ、稽古せよ、演じよと闇から迫ってくるその力に、逆らうすべなどなかったのだ」2025/01/30
TK39
5
1920年代のメキシコの政治闘争を描いた小説。とはいえ、事実をベースとしており、魑魅魍魎とした権力闘争を生々しく描いている。暴力なしでは権力は握れないのは今も昔も同じ。独立した後も結局、一般市民のための政治ではなく、軍の内部闘争に明け暮れ、現在は麻薬による暴力、汚職、腐敗と一般市民は浮かばれない。19世紀後半のマクシミリアン皇帝時代の「帝国の動向」にチャンレジ(積読本)。2021/05/14