内容説明
若きスタンダールとバイロンを熱狂させた異形の才能。１８世紀イタリア最大の劇作家アルフィエーリ―王家の親子の確執を描いた『フィリッポ』、正気と狂気の狭間をゆれ動く古の王『サウル』の傑作悲劇二篇を収録。本邦初訳。
著者等紹介
アルフィエーリ，ヴィットーリオ［アルフィエーリ，ヴィットーリオ］ ［Ａｌｆｉｅｒｉ，Ｖｉｔｔｏｒｉｏ］
１７４９‐１８０３。イタリアの悲劇詩人。ピエモンテ地方のアスティに生まれる。フランス古典演劇に代表される合理的な筋の運びと流麗な言語運用からは一線を画す作劇法を追求、追い詰められた人間の不安と苦悩をサスペンス性の高い表現法で描出した。登場人物への極度の一体化を要求するその作風はロマン主義期の作家たちに好まれ、権力を嫌う非順応主義的な思想と生き方は、後のイタリア統一運動や反ファシズム運動期の思想家・活動家の精神的拠り所とされた
菅野類［カンノルイ］
１９７５年、宮城県白石市生まれ。京都大学文学部文献文化学専攻イタリア語学イタリア文学専修研究指導認定退学。現在、京都大学ほか講師。専門は十八世紀イタリア文学（悲劇および小説）（本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです）
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感想・レビュー
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ケイ
105
作家は18世紀後半のイタリア詩人。フランス革命の時はバリにいた。「フィリッポ」「サウル」ともに戯曲、なのかな。二作とも、息子や娘婿を信じられず、家臣の言うことにむしろ耳を貸し、身内を失っていく王の話。王たるもの、国を治めるにあたり、誰の言うことを耳を傾けるかというのは王の運命を、さらには国の運命をも左右するのだな。2020/06/28
まどの一哉
2
巻末には現代評論の抜粋や訳者による丁寧な解説があって、アルフィエーリ作品の革新性と歴史的経緯がよくわかるが、今となってはごく普通の表現なので我々はただ楽しんで読むことができる。 頑迷なる国王の権力がいかに恐ろしいか、善意だけでは打ち勝てない悲劇を描いて、ロマン主義の魅力たっぷりの作品だ。2023/11/25
nightowl
2
かつての許嫁が義理の母に。当然起きた悲劇の結末「フィリッポ」従兄に唆された上、嫉妬の炎を燃やし娘の夫を殺そうとする「サウル」。オペラの歌詞を訳したかのように大仰な台詞の数々。しかし、それこそがギリシアにも遡る悲劇の原点では？と思う向きには堪らない二作。特に前者はオペラ化もされたシラー「ドン・カルロス」から骨子である親子の愛憎のみを抜き出したシンプルな構成で無駄が無い。作家の生涯(不倫の嵐！)と生きた時代(フランス革命前後)も濃密。この時代の書物はもっと読み漁りたい。2022/02/17
きぃ
2
初めてイタリア文学を読んだ。戯曲に詳しい訳では無いが、激しい会話の応酬が切迫感を感じさせた。『フィリッポ』は息子を男として愛した妃の破滅、『サウル』は狂気にあてられた王の話。どちらも登場人物が人間的で自由や愛を求める姿が克明だった。『サウル』については聖書知識がなかったので難しかった……旧約聖書読まなきゃ2020/06/24
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