内容説明
保守やリベラルよりも大切な、言論の信頼を問い直す。飛び交う言説に疲弊してゆく社会で、今こそ静かに思い返したい。時代の順風・逆風の中「自分の言葉」を探し求めた、かつての言論人たちのことを―20年以上にわたり書き継いだ、体現的「論壇」論。
目次
第1章 戦後論壇の巨人たち(福田恆存―「保守反動」と呼ばれた正論家;田中美知太郎―歴史の真実を語ろうとした人 ほか)
第2章 文藝春秋をつくった人びと(菊池寛―「非凡の人」の新しさ;佐佐木茂索―文春を救った人 ほか)
第3章 滝田樗陰のいた時代(サヨナラ「中央公論」;木佐木勝日記の「完本」と「原本」を読み比べる ほか)
第4章 ラディカル・マイノリティの系譜(アメリカと「左翼」の照応;エリア・カザン―裏切者と呼ばれて ほか)
第5章 「戦後」の終わり(文春的なものと朝日的なもの;「戦後八十年」はないだろう ほか)
著者等紹介
坪内祐三[ツボウチユウゾウ]
1958年東京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒業、同大学院英文科修士課程修了。雑誌『東京人』編集者を経て、1997年初の単著『ストリートワイズ』(晶文社)を刊行。2000年より、単独編集した『明治の文学』全二五巻(筑摩書房)を刊行。2001年『慶応三年生まれ七人の旋毛曲り』(マガジンハウス)で講談社エッセイ賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
59
戦後論壇の大物についてのエッセイと、文春中公の歴史と人物。アメリカのリベラルについての紹介が中心となった一冊。知識人の化けの皮が剥がれてから随分なるが、昔の知識人は一本筋が通っているような気がする。葦津珍彦とか通り一編の事しか知らなかったが、これで読むとその逆張りに清々しささえ覚えるし。それにも増して面白かったのは文春と中公を扱った章。菊池寛と滝田樗陰の二人がビッグネームすぎるが、その他の編集者のプロフィールとか活躍が面白すぎる。全体的に雑然とした部分もあったけど、戦後論壇文壇について教えられること多し。2018/10/23
もりくに
30
小説は、「帯」や目次は見ないし、映画の「予告編」は、絶対に見ない。だって、おもしろみが台無しじゃん。でもノンフィクション、特に思想系は「まえがき」「目次」「あとがき」は、必ず先に読む。多分、自分の読解力に自信がないから。こうして読んだこの本の「あとがき」には、現在の日本の思想の危機的状況への危惧(絶望?)が、記されている。いわく、「この国には、知識人がもうほとんど残っていない。しかも、まったく補填されない。」「ツイッターの言葉は、文脈がない。」(思想は、文脈で語られる の意か?)この本が最後の評論集とも。2018/07/04
阿部義彦
23
渋い本をだしてるなあ、と横目で睨んでいた幻戯(げんき)書房より、坪内祐三さんの評論集がでました。今は亡き論壇人を縦横無尽に語ります。坪内さんは文藝春秋志向の人でしたが今のスキャンダル雑誌と成り果てた週刊文春をどう思ってるんだろうか?まあとにかく、編集者列伝が面白かったです、中央公論の、滝田樗陰は山本夏彦さんの本で知ってはいましたが、偉そうなだけではない人柄なども詳しくて興味深かったです。朝日、文春、新潮の違いやその思想性、大宅壮一、山本七平などの論壇人をひとまとめにわかり易く纏めて凄いです。勿論菊池寛も。2018/01/28
チェアー
14
追悼坪内祐三。彼の危機感は強い。もはや思想を語れる人はいなくなり、思想を受け止める素地もなくなっていく。ネットの情報だけで語る「思想」の危険性を、彼は知っていた。彼は現場に立ち、空気をつかんでから考え、書いた。空気は歴史(現在、過去、未来)を含んでいて、人や社会も含んでいる。それらを皮膚で感じることなく、ネットの「情報」なるものだけで浮ついた言葉を発していくことの怖さ。それはこれから本格化するのだ。嫌だけど。2020/02/29
モリータ
12
◆2017年刊の評論集。前半部分の戦後の知識人列伝(「戦後論壇の巨人たち」)を読みたく購入。連載当時の90年代末に故人となっていた知識人が対象となっているので、今日から見れば評が読みたい人物も。続く文藝春秋社と中央公論社偉人列伝も面白かった。いずれも『諸君!』を中心とする総合誌掲載の短めの評論集。残念ながら最後の長編評論集になりそうとのことだが、『文庫本福袋』ぐらいしか読んだことがない(今読んでる)ので、今後遡って読んでいこう。◆『文庫本福袋』もそうだが、ブックガイドにもなれば、いろいろと繋がる本。2019/07/31