出版社内容情報
1960年代の「千円札裁判」体験を基にした表題作を含む、尾辻克彦名で発表した、メタ私小説の超傑作10編を収録。
赤瀬川原平[アカセガワゲンペイ]
内容説明
のちに「千円札裁判」へと至る若き時代を描く、封印されていた伝説の処女小説ほか、日本文学に「超私小説」の領域を拓いた天才の軌跡を辿る傑作群10篇を初書籍化。
著者等紹介
赤瀬川原平[アカセガワゲンペイ]
1937年3月27日、横浜市生まれ。本名・克彦。81年、「父が消えた」で芥川賞受賞。2014年10月26日、死去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
阿部義彦
16
ずっと前から読みたかった本、幻戯書房刊。手に入れるには、本屋で客注すれば良いのだが、自分は何か恥ずかしいので、honya club に入会して、指定する本屋への店舗受取にして、メールを待って受け取りに行きました。私の一番好きな小説家、美学校の講師、エッセイスト、考現学トマソンの名付け親、ライカ同盟同人、ダダイスト、前衛芸術家である赤瀬川原平さんの未発表原稿をまとめた本です。表題作は若き頃のアンデパンダン展への模造千円札の制作過程とシンクロしており、スリリング、他の短編も必然的偶然に満ちており得がたい読書。2024/07/14
paluko
10
むちゃくちゃ面白かった! こんな文章が書けたらな~と憧れる。「ブンガクっぽくしようとして突飛な比喩をひねり出してみました」じゃなくて、自分の身体的な実感を正直に表現した結果がユニークな表現になっているという…。「玄関のブザーというのはときどき鳴るように出来ている」(102頁)「いま抗議のテレパシーがあった」(248頁)「もう自分にはライカがあるから大丈夫、という何かお守りみたいにしていたのではないかと思う」(300頁)とか。表題作を読むと、美術家も登山家飛行家なみに危険な職業(?)であることがわかる。2024/12/07
hirayama46
5
赤瀬川原平・尾辻克彦の単行本未収録作を集めた短編集。性質上、出来にはばらつきがある……かと思えばさにあらず、どの作品も読みどころの多いものが揃っていて、ことに「果し合い」「海部」あたりは私小説っぽい雰囲気を出しながらテクニカルな手法もふんだんに使われた、名匠による佳作といっていい作品だと思います。表題作もなかなか良かったのですが、過去の裁判あたりの事情を知っておくとより楽しめたのかな、と感じました。2023/03/13
yutaro sata
3
赤瀬川さんの現実への接近ってなんか、どきどきしますよね。
tama
3
図書館本 赤瀬川ファンなので 「確かに小説だ」と思えるのは表題作だけ。使う言葉が凄い。螺子釘の海だもんな。で、他の作品はいつもの原平さんの、現実の記憶だか空想だかよくわからない、でも深刻にならないお話。「東京の乞食のまとうボロは汚いと思うが、レーピンの描いたヴォルガの舟曳人のは、霊的な光の塊として輝いている」。小学三年生の娘の胡桃子ちゃん「ガラス戸が開いて胡桃子のピンクの顔がコロリと飛び込んで来る」たしかに小学三年生コロコロしてるよ!表現者って凄いなぁ。2017/08/02