出版社内容情報
日本近代文学運動とその相関図の中に折口を位置づけ、文学者としての折口が切り開いた、古代と近代を結ぶ試みを読み解く。
持田叙子[モチダノブコ]
内容説明
古語の力で、血の通わぬ近代のことばを破壊する。「孤高の知の巨人」という像を覆し、彼の烈しい憧れと苦闘に光を当てたとき、“歌”と“詩”の持つ“未来を呼ぶ力”が明らかになる―折口を通して日本近代文学の相関図を大胆に読み直す、破壊と新生の力みなぎる書。
目次
1(歌の子詩の子、折口信夫;大阪の兄さん詩人―薄田泣菫;小銭の詩;両性具有の発見―鉄幹、晶子;大いなる城門―森鴎外;愛の悲痛を生きる―岩野泡鳴;日本一の中学教師)
2(雪の島の黒い瞳―写生と実感;紀行文の時代を歩く―松岡國男と田山花袋;青の戦慄―柳田國男)
3(未来を呼ぶ批評;豚の煮こみと源氏物語;乱菊と母;天上の花を織る;風猛慕情―「山越しの阿弥陀像の画因」考)
著者等紹介
持田叙子[モチダノブコ]
1959年生まれ。慶応義塾大学大学院修士課程修了。国学院大学大学院博士課程単位取得修了。国学院大学兼任講師。毎日新聞書評担当者。三田文学理事。専攻は近代文学研究と文芸評論。著書に、『荷風へ、ようこそ』(慶応義塾大学出版会、2009年、第31回サントリー学芸賞受賞)などがある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
井月 奎(いづき けい)
44
折口信夫がなぜあのように考証が難しい論説をおこなったのかがおぼろにわかります。古代から現代までの通底することに対して情念や物語を通して人の、日本人のありようを考察したからではないかと思います。情念は論理での理解は難しいですし、物語はさらに矛盾も含みますので。柳田國男を尊敬しつつ恐れと反発を持ちつつ師事した民俗学者、泉鏡花にあこがれつつ、自らの小説はそのほとんどを中絶した物語作家、寂れると感じながらも多くの短歌を詠んだ歌の子である折口は恋とさみしさの中に人のつながりがあると思っているのではないでしょうか。2022/03/05
yutaro sata
30
折口さんを折口さんたらしめて来た環境、先人について書かれていて面白い。あと、大学生くらいの時に訳も分からないまま何故か惹かれて読んできた柳田さんのことが今までよりもちょっと分かるようになる記述などもあって面白かった。山のこと海のこと。古代とはその時代というよりその精神なのだと。だから古代はここでも息をしている。批評する際にはその作家の未来まで見据えるものでなければと。折口さんという人にまた一層惹かれることになった。2022/10/09