内容説明
戦前の前衛詩を牽引したモダニズム詩人にして、建築・デザイン・写真に精通したグラフィックの先駆者が、1930年代に試みた“エスプリヌウボオ”の実験。―書籍未収録35の短篇。
著者等紹介
北園克衛[キタゾノカツエ]
1902‐78年。三重県生。1920年代(大正末期)から詩作を始める。西脇順三郎・瀧口修造らと並び、西欧の前衛運動と呼応した日本のモダニズム詩・前衛詩を牽引。戦後はイラスト・デザインにおいても活躍、バウハウスの影響を強く受けたスタイリッシュな作風でハヤカワ・ミステリ文庫など手がけた装幀は膨大な数に上る。1935年創刊の主宰誌『VOU』は、詩はもとより写真・美術・建築・音楽・映像などをフィーチャーする総合芸術誌として、今なお海外からの注目も高い(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
rinakko
8
うとり…これは素敵な本。少しずつねぶねぶ摘みたくても出来なくて、もう一つあともう一つ…と指先が頁を繰ってしまう。吸い寄せられるようだった。白くて眩しくてどこか淡く儚い。真水みたように冷やりと澄む孤独。“僕は夏の白昼の街を好いている。燃えたつような白昼の白いスカイスクレエパアを愛している。”2016/01/20
u
4
意外に俗っぽい筋だけど (洒落てはいるが、ユーミンみたい)、ところどころに清冽なイメージが輝く。たとえば「黒水仙」の出だし、「三月の空気が新しいプリズムの様に冷く澄んでいる。桜の幹に頬をよせて、去ってゆく港の白い船を見給え、そのようにすべての純粋な日々も亦儚く去ってゆく。」なんかは読んでいて清々する。話としては「献辞」と「驟雨」が好き。「初夏の記録」は男女の心理のズレにドキリとする。余談だけど、ひたすら「〜のです」という文章で語られていく一連の小説には、はっぴいえんどかよ、と思った。2018/03/03
保山ひャン
1
1930年代を中心とした小説と文学論などを集めた本。フランス語がときどきまじる洒脱な都会小説が多いが、基本、女にふりまわされている内容のようだ。小説を書こうとしている作家、というメタ小説の「セパアドの居る家」と、SFチックな「レグホン博士のロボット」みたいな話もあった。2016/04/24