内容説明
異次元界からの便りを思わせる“譚”は、いま地上に乏しい。―時代の現実を裏返す反世界の作家が生涯求めた“博物学的精神”の行方とは。『虚無への供物』から半世紀を経て黒鳥座XIの彼方より甦った、全集未収録の随筆・評論集。
目次
1 ハネギウス一世の生活と意見
2 喪われた金貨
3 物語の魔都
4 肉体の背信
5 譚の水脈
6 自作解説
著者等紹介
中井英夫[ナカイヒデオ]
1922年9月17日、東京市田端生まれ。東京高等師範学校附属中学校卒業後、旧制府立高校に進み、戦時中は市谷・陸軍参謀本部へ勤務。敗戦後、東京大学文学部言語学科に復学し、第十四次「新思潮」を創刊。東大中退後、日本短歌社、角川書店で短歌雑誌を編集、塚本邦雄、中城ふみ子、寺山修司らを見出す。64年『虚無への供物』を塔晶夫名義で刊行しデビュー。74年『悪夢の骨牌』で泉鏡花文学賞受賞。93年12月10日死去。享年71(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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HANA
44
随筆集。全集未収録をまとめたという事で、身辺雑記から乱歩、正史、三島由紀夫、果ては日影丈吉や赤江瀑という比較的最近の作家まで様々なものが収録されている。作家論、作品論を読んでいて、ああそういえば塔昌夫はミステリ作家だったな。という事を思い出した。何となく中井英夫=幻想文学と思い込んでいて、そちらのイメージが強すぎたのもあるが。身辺雑記も面白かったが、やはり一番興味深いのは作家論。乱歩、正史は当然だが久作や虫太郎、十蘭といった思い入れの深い作家群が中井英夫の筆によるとなると、もうそれだけで大満足であった。2015/05/30
有理数
14
中井英夫の全集未収録随筆集。「物語の魔都」等、ただの章題ですら神秘的な眩さがあり、どうしようもなく惹かれてしまう。中井英夫はとても厳しい眼差しを持っているときもあり、けれどとても優しい眼差しも持っている。幻想文学と探偵小説の過去と未来をそういう柔軟な視線で行き来し、憂いても決して優しさは失わない。そういう眼差しで見つめた世界だから、何を語っても美しい物語に還元されてしまうかのようだ。なんだかこの人は、普通の人とはやっぱり生きていた次元が違ったのだと思う。2015/06/27
保山ひャン
2
中井英夫の未収録エッセイ集。中井英夫は、エッセイ集刊行時に執筆分の3分の1ほどを選んで編んでいた、ということは、まだまだある、ということだ。内容の重複も気にならない。何度でも十八番のエピソードや嘆きをきかせてほしい。第1部で語られる少女密偵団の面々はきっと中井英夫に影響受けまくった作品を同人誌などに発表していると思うので、そういうのも読みたい気がする。2016/06/16
almondeyed
1
これは全集からも漏れてしまった随筆や評論をまとめた本。ハネギウス一世とは、世田谷区羽根木に住む著者の事を友人たちがこう呼んだのに依るもの。で、中井英夫の友人の画家はひばりが丘に住んでいて、ヒバリウス二世と名付けられたそうだが、これは誰の事なんだろう?この短い評論集の中ではシドニーの地下道の話が面白かった。2015/06/17
mujina
0
全集未収録の新刊が 今出る事が嬉しい…一読 地上を離れる心地のエッセイはやっぱり紛れもなく中井英夫…赤江瀑や日影丈吉などへの言及も好きなだけに興味深かったです…2015/11/14