内容説明
もっともらしさ、インテリ特有の権威主義、鈍感さへの抵抗。
著者等紹介
小林信彦[コバヤシノブヒコ]
昭和7(1932)年、東京生れ。早稲田大学文学部英文学科卒業。翻訳推理小説雑誌編集長を経て作家になる。芥川賞候補三回、直木賞候補三回。昭和48(1973)年、『日本の喜劇人』で芸術選奨文部大臣新人賞受賞。平成18(2006)年、小説『うらなり』で第五十四回菊池寛賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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だまん
9
翻訳推理小説誌の編集者時代の自伝的な小説だそうだ。戦後に限るのかもしれないが、江戸川乱歩がこんな精力的な人物だったとは。出版社の経営までやったんですね。それにしても、編集や翻訳から作家へ転じた著名人(というか伝説の人物)が仮名もあるとはいえ無造作にばらばら出てきて怖いほどだった。古い人にしかできない贅沢だなあ。2013/01/19
kokada_jnet
9
かつての翻訳家・編集者たちの交際を描いた短編「男たちの輪」。常盤新平が憎いのは十分にわかったが。都筑道夫に対しても、愛憎相半ばする、独特な思いを抱いていたんだね。また、「夙川事件―谷崎潤一郎余聞」に登場する人物長谷川修二がWikipediaに立項されているので見てみたら、この短編が参考文献にあげられていた。2012/09/23
5〇5
5
推理小説がまだマイナーな時代。自転車操業状態で雑誌作りに奮闘する男たちの物語だ ♦私財を投じ雑誌の復興に尽力した江戸川乱歩の苦悩が痛々しい ♣そして、二十代半ばでそのど真ん中に放り込まれた著者の葛藤が生々しく語られる ♥当時のミステリ雑誌「宝石」「ヒッチコックマガジン」の裏側にかくもどろどろした逸話があったとは ♠驚きとともに、重苦しくも空しい気持ちにさせられる。だが、当時があっての今なのだ。2019/04/09
角
5
小林信彦が「ヒッチコックマガジン」編集長をしていた時代を題材にした短編を集めたもの。うち2篇はすでに他の本に収録済みで既読だったが、このような形に編み直されてみると、当時の著者の暗い心持ちが一層どこまでも迫ってきて、遣りきれない読後感。しかし小説という形だけではなく、「テレビの黄金時代」みたいな評論形式で、この時代を書いてはもらえぬものか。もう、その時代の証言者があまり残っていないと思うので……。2012/08/18
horuso
4
小林信彦が乱歩に誘われて、ヒッチコック・マガジンの編集長をやっていたとか、宝石社を手ひどく追い出されたといったことはもちろん知っていたが、克明な事情は「男たちの輪」で初めて知った。いや、「夢の砦」に書かれていたっけ?もうすっかり忘れてしまっている。ドライな筆致とはいえ、うらみつらみが綴られた本作の苦さは相当なもの。稲葉明雄氏とおぼしき人物との交情が唯一の救いだが、この中編だけでなく、収録作すべて、決して面白いものではなく、素人には勧められない。著者のファンとしては、この面白くなさが好きでたまらないのだが。2015/05/08