内容説明
岩鼻の灯台はひとりぼっちとなり、だれのものでもなくなりました。まいばん、暗い海をてらしていた明かりもきえてしまいました。もう、ラジオの音も子どもの笑い声もきこえません。きこえてくるのは、足もとの岩にうちよせる波の音だけ―
著者等紹介
山下明生[ヤマシタハルオ]
1937年東京生まれ。広島県能美島で育つ。京都大学文学部仏文科卒業。児童書編集を経て、70年に『かいぞくオネション』(偕成社)を発表。以後、幼年童話、長編創作、英・仏語の翻訳と幅広く活躍。『海のしろうま』(理論社)で野間児童文芸賞、『はんぶんちょうだい』(小学館)で小学館文学賞など、受賞多数
町田尚子[マチダナオコ]
1968年生まれ。東京都出身。武蔵野美術大学短期大学部卒業(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ぶち
117
町田さんの絵の魅力に虜になっています。この本は山下明夫さんの灯台のお話に絵を描いています。どんな絵なんだろう...お役ごめんになった古い灯台が、岬の先っぽに、ひとりぼっちで立っています。そんなさびしい灯台のもとに、少しずつ生き物たちが集まってきます。いろいろな動物を楽しめます。それも大勢の団体さんです。ノラネコの家族には白木さんも混じっています。海の深い青、空の水色、ホタルイカの光。『いるのいないの』と同じように、さまざまに視点のアングルを変えての絵の美しさに息をのみます。静かに感動が押し寄せてきます。2020/11/07
かりさ
101
今ではもう役目を終えて無人になった岩鼻の灯台のお話。山下さんの優しいお話と、町田さんの美しい絵がとても素敵で何度も読みました。誰のものでもなくなって、ひとりぼっちになってしまった灯台、ぽつんと寂しそう…。でもそんな灯台にはちゃんと仲間がいるんです。自ら光を放っていた灯台がその光を終えた時、今度は灯台を温かく照らしてくれる光たち。その幻想的なこと。これまでご苦労さま、これからは余生をゆっくり楽しく過ごそうね。そんな声が聞こえてきそう。山下さんの灯台への愛に優しくじんわりしました。2016/05/10
seacalf
91
少々堅苦しい印象の表紙絵からは想像できない満足感。とにかく町田尚子さんの画力と構図の妙に圧倒される。こういう驚きがあるから絵本を読むのをやめられない。淋しい序盤から打って変わって出るわ出るわ、可愛らしい動物達が。とりわけ猫とムササビとカモメの顔が愛らしいこと。夏空や月夜の晩、ホタルイカが集う風景など、1ページ1ページが目を見張るほど美しい。これは前から気になっていた『ネコヅメの夜』も読まないと。2020/07/23
愛玉子
54
読み聞かせ候補、8分、中・高学年向き。表紙の深みのある赤、空と海の青、白い壁に落ちる影のコントラストにうっとり。よく見ると階段に猫も!ある日突然お役ごめんとなり、灯りも消え、だれのものでもなくなってしまった灯台。「ちょっと、おじゃましてもいいですか?」次々に現れる動物たちの生き生きとした表情、春の地面の暖かさ、夏の空の抜けるような青さなど、たまらなく素敵。灯台を地面から見上げたり空から見下ろす大胆な構図も素晴らしく、灯台のほわほわな気持ちまで伝わってくる(しかしツンデレだな灯台さん)。心温まる絵本です。2021/02/28
アナーキー靴下
54
お気に入りの方にお薦めいただいて。この絵本を読んだ後の気持ちはなんと表現したら良いのだろう。癒される? 心温まる? 幸せな気持ちになる? どうもしっくり来ない。子供の頃好きだった絵本「てぶくろ」に似たワクワク感があることは確か。てぶくろもこの灯台も、中にいるのは動物たち。てぶくろより灯台のほうが圧倒的に大きい分、詰め込めるワクワク感もよりたくさん。何より町田尚子さんの絵が素晴らしい。もちろん猫も出てくる。極悪顔がまた可愛い。美しいラストも素敵だけど、まだまだ続く可能性も? とか想像するとこれまた楽しい。2021/02/11