内容説明
「私は長く、彫刻と社会とのあいだに、新しい関係がつくりだされなければならないと考えてきた」見果てぬ場所。誰のものでもない場所。庭は、文化の原器であり、人間の原器である。
目次
憧れの家―庭、この彫刻を超えるもの
影としての「ヒロシマ」―曲線の意味するもの
孤独なモダンの響きあい―北鎌倉の魯山人と
マンハッタンの闇―シュルレアリズムの背理
宇宙庭園という陶彫―再び鎌倉
幻の北京―生命潮流とアジア的バロック
詩人の部屋から―ノグチのインテリア
三田山上―未来人の集うアクロポリス
「どこでもない庭」の現前―草月会館ロビー「天国」
時間の庭、未来の共感共同体―札幌モエレ沼公園
ヴィーナスの所在―舞踊する庭、モエレから牟礼
母への巡礼、あるいは魂の舞踊―高松、牟礼
著者等紹介
新見隆[ニイミリュウ]
1958年、広島県尾道生まれ。慶應義塾大学文学部仏文科卒業。専門は美術史、デザイン史、美術館学。セゾン美術館学芸員を経て、武蔵野美術大学造形学部芸術文化学科教授。大分県立美術館館長。二期リゾート文化顧問。イサム・ノグチ庭園美術館学芸顧問。慶應義塾大学アート・センター訪問所員。パナソニック汐留ミュージアムにおける「ウィーン工房1903‐1932モダニズムの装飾的精神」展(2011年)の企画監修によって「第七回西洋美術振興財団賞・学術賞」を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Koki Miyachi
9
筆者の目を通してみたイサム・ノグチの評伝。彫刻の印象が強いノグチだが、庭園への夢を持ち続け、遺作モエレ沼公園で結実する。そこに至る人生の場面やアトリエ、北大路魯山人など文化人達との交流にも光を当てる。質素でシンプルなアトリエには日本人の父とアメリカ人の母を持つルーツゆえの精神性が宿っているように感じた。主観的な筆致でありながら嫌味に感じないのは筆者のノグチに対する思いゆえだろう。図版も興味深いものが多く見応えがある。2018/05/28
Marie
5
大学教授の縦横無尽な思索の旅。フランス象徴派から二期倶楽部まで挙げながら、著者のノグチに対する考えのベースは、母なるもの父なるもの、孤独、愛。内的なもの・身体感覚、自然・宇宙。円環、揺らぎ。という感じなのか。「永遠の時と、たったひとつの時が交叉する場所。誰に対しても開かれた場所であって、そして誰のものでもない、‥、無償で、至上の、場所。そこには、ただ、明るい光の孤独があるだけである。」「私」から「宇宙」への円環の構造、‥「時の庭」。発見の道を歩みはじめた私にはまだこの旅は難しいのでもう少し散策しようと思う2021/09/19
takao
2
ふむ2023/07/20
newhavana
1
B6版ハードカバー・330ページ。巻頭にカラーグラビア8ページ。本文中に白黒写真多数収録。巻末にイサム・ノグチ略年譜&参考文献一覧。たくさんのモエレ沼公園の写真を期待したのだが、写真・図版による作品紹介本ではなく、著者によるイサム・ノグチの作品解題・評論集。文章は、よく言えば散文詩調で時に哲学へ、時に宗教的解釈へとあちらこちらへ飛ぶもの。悪く言えばただの悪文であり、主語省略の複文・複複文などばかりでとても読み辛く、理解にとまどう。昭和の終わりの浅田彰ブームの頃を懐かしむ人にはよいかもしれない。 2024/08/20
とす
1
作品を何度か見たことあるがよく知らなかった作家について学ぶことができた。写真がたくさんあるのでどんなものの話をしているかは分かった。モエレ沼と牟礼の美術館に行ってみようと思う。2018/12/23