目次
第1章 二人の作家のデビュー作―『行列』と『虫の生活』『オモン・ラー』(別々のコースを歩んでいたソローキンとペレーヴィン;ソローキンのデビュー作『行列』;ソ連の日常生活の鏡としての『行列』 ほか)
第2章 対話の始まり?(九〇年代半ば以降)―『青い脂』と『チャパーエフとプストター』『ジェネレーション“P”』(ソローキンの小説『ノルマ』と『ロマン』;『青い脂』;ソローキンの高度に技巧的な文体 ほか)
第3章 挑戦と反撃―ソローキンの『氷』三部作VS.ペレーヴィンの吸血鬼二部作(『氷』三部作;『二三〇〇〇』;ソローキンの進化の過程 ほか)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
きゅー
15
ソローキンとペレーヴィンの作品紹介をしつつ、両者のあいだにある密かなライバル関係を探ることが目的の本書。ソローキンはひたすらに文学的言辞を空洞化させ、伝統的な文学を破壊し、空虚=ゼロの文学を創りだすという手法をとる。対してペレーヴィンは、いったんは文学を否定するのだが、その内に神話的コンテクストを生み出し、非文学的な(哲学的・宗教的)意味を追究しているという点で大きく異るという。内容としては作品紹介がメインとなっており、詳細な比較検討がされているわけではない。もっと踏み込んだ議論がされても良かったのに。2015/03/25
保山ひャン
3
現代ロシアの作家二人を取り上げ、それぞれの作品から、近年お互いを意識しあうようになる経緯などをたどる。どちらも、支配的で権力的な物語を利用しながら、ソローキンは最後に暴力的に破壊し、ペレーヴィンは背後に隠された意味を明らかにする。うむ。どちらも面白そうだ。2017/03/14
スターライト
3
近年注目の現代ロシア文学の旗手の二人を、デビューからの作品を通してその魅力と互いに意識し合っていく過程をコンパクトにまとめた書。それぞれが自分なりに既存の価値観、ソビエト・ロシアの文化・社会に特有の言説や物語を脱構築、あるいは多重化してずらすことで、その空虚さやイデオロギー性を暴いていくさまを具体的に分析している。彼らの作品を読み解く手がかりとなるが、本書を読むのはそれらを読んでからの方がいいだろう。2015/05/20
いのふみ
2
ロシア現代文学を牽引するソローキンとペレーヴィンの、素知らぬふりをして(?)実は牽制し合っているような関係性は、きっと実は皮肉とユーモアが混じった形の切磋琢磨なのだろう。もっともっと盛大にやってもらって、別の世代や国も巻き込んで、ロシア文学を、世界文学を盛り上げてほしいと思った。2015/05/21
晴天
0
文学においても、革命、大祖国戦争、社会の停滞感や流通不全、ソ連崩壊後の混乱などの歴史は作者や読者にとって自分自身の、そうでなくとも自分と地続きの記憶として意識の外に置くことのできない存在であることを思わせる。2021/06/15
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