出版社内容情報
なぜ、人は自然の中で遊ぶ必要があるのか。
肺がんの治療を経てなお虫を追い続ける解剖学者・養老孟司は、いまの子どもたちに伝えたいことを問われ、ただ一言、「遊べ」と答えた。
自然は、社会から逃げられる場所だ。人間関係しかない世界では、いじめのような悩みに逃げ道がなくなる。
かつては山や川という別の世界があり、人の世のごたごたはそこまで追いかけてこなかった。人は人を教えられない。できるのは、経験の機会を与えることだけ。
一方、かつて長良川河口堰建設への熾烈な反対運動に取り組み、日本の河川行政を動かしてきた天野礼子。「これはダメです」と声を上げ続けた彼女は、養老孟司から「このほうがいいじゃないですか」と提案する姿勢を学び、川から森へと軸足を移した。
「虫採りは論理より感覚を大事にできる遊び」「教育の錯覚」「自然の恵みだけで楽して生きていける社会を」。虫と身体の話から社会へと問題提起を広げる養老さんの言葉を、天野礼子との対談、天野による「日本に健康な森をつくり直す委員会」ができるまでを綴る文章、モンベル会長・辰野勇氏の特別寄稿とともに読み解く。あなたが最後に川や森で遊んだのは、いつですか。
【目次】
はじめに……8
養老先生との対話
虫と魚が教えてくれる、自然の価値を探して……16
川から虫へ 感覚が育まれた少年時代……18
カニの怖さがちょうどいい……18
激減する昆虫……24
昆虫を分類するということ……27
論理中心の社会で、感覚を大事にすること……30
違いに気付くのは感覚の働き……30
感覚を無視することが「大人になる」ということ……33
感覚を下に置いた社会が直面するものは……37
物語・言語化・AIの限界「感覚世界からの離陸」……40
嘘と認識したうえで楽しむ世界……40
他者へ伝えるための「物語化」……43
身体感覚・意識・認識のズレ……45
「客観性」「エビデンス」の落とし穴……51
自然からの恵みで暮らせる社会へ……59
社会の本流から外れてもいい……59
表現に他人は必要ない……62
自然を、虫を、考慮に入れてくれ……65
ケンモリの意義……68
【対談】養老孟司×天野礼子
恬淡・篤実な虫屋が〝川のジャンヌダルク〟へもたらした変化……75
ケンモリ誕生の経緯……76
長良川河口堰を経て、「反対」から「提案」へ……84
虫から見た日本の自然と地質……89
自然離れは子どもの逃げ場をなくす……91
意識の転換はできるか……95
闘病とこれから……99
「川から森」へたどり着くまで 天野礼子……103
ハンガーストライキでは止められなかった長良川河口堰……104
カナダが教えてくれた森・里・川・海、ひとつの命……108
川を守る方法の転換へ……110
日本の森が抱える宿題……113
養老先生と取り組んだわけ……114
なぜ高津川だったのか……118
若い人たちに伝えたい言葉……121
【特別寄稿】山の思想と経営哲学 辰野勇(モンベル会長)……125
出会い……126
山の思想と経営哲学……129
常識……133
【解説】ふたりが示すニッポンの川・自然の未来 山根和明(つり人社代表)……137



