内容説明
原始の洞窟壁画から現代の実験的な芸術にいたる、美術の全体を論じた入門書。率直で単純な文体と、物語をくっきりと浮かび上がらせる話術で「絶えず変化しながら連綿とつづく伝統のなかで、ひとつひとつの作品が過去を語り、未来を指さす」ような美術史、「伝統という生きた鎖が、ピラミッド時代の美術から現代美術にまで延々とつらなる」物語としての美術史を目に見えるように描きだしている。
目次
不思議な始まり―先史、未開の人びと、そしてアメリカ大陸の旧文明
永遠を求めて―エジプト、メソポタミア、クレタ
大いなる目覚め―ギリシャ前7世紀‐前5世紀
美の王国―ギリシャとその広がり前4世紀‐後1世紀
世界の征服者たち―ローマ人、仏教徒、ユダヤ教徒、キリスト教徒1世紀‐4世紀
歴史の分かれ道―ローマとビザンティン5世紀‐13世紀
東方を見てみると―イスラム、中国2世紀‐13世紀
るつぼの中の西欧美術―ヨーロッパ6世紀‐11世紀
戦う教会―12世紀
栄光の教会―13世紀〔ほか〕
1 ~ 3件/全3件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
nobi
33
階段教室で、スクリーンに映される絵、彫刻などを見ながら講義を聴いている、そんな臨場感がずっとあった。全28講413枚の図版。「はじめに」「序章」含めて毎回刺激的。講師は実物も多くの批評も知っているのに、初めてのように丹念に図版を見ていく。特にジオット以降のイタリアの巨匠たちからレンブラントまで、思わず熱が入って割かれる時間(紙数)も大幅に予定を超えてしまった感じ。「傑作とじっくりむきあって、その創造の秘密にふれる」ことから時代も様式も見えてくる。微視的と俯瞰的の幸せな出会いがあり表現は簡潔でヴィヴィッド。2016/08/27
たかしくん。
29
本来読むべき古代が退屈になり勝ちでしたが、中世/ルネサンス以降は後半の図版と常に頁を往き来して…。「春の戴冠」の主人公ボッティチェリの突き抜けるような「ヴィーナス」そのものが革命に近い作品だったのですかね。宗教活動の手段として発達した美術ですが、近代につれてその題材の幅は拡がり、一方で従来ほど正確な描写が要求されなくなり、漸く印象派が登場。その台頭の背景が、写真の登場であり、また、浮世絵を代表とする日本人の予想外の視点だったとは!。他、印象より構成を第一に重んずるからこそのピカソの作品、等々。名著です!2018/08/19
ミッキー・ダック
21
美術史の世界的な名著で、1950年初版、66年、89年追記。未開美術からモダンアートまで、絵画中心に建築・彫刻を含む豊富な図版を見ながら、時代と共に変化する美術の思想と技法を学ぶことができる。◆単に作品を並べるのではなく、個々の画家たちが伝統や過去の作品から何を継承しあるいは否定し何を創造したかを、連綿として続く挑戦の物語として描いており、非常に勉強になると同時に感動させられた。展覧会の前に読めばその画家の挑戦が良く分かり、絵の印象が変わりそうだ。◆素晴らしい本を紹介してくれた、もりくにさんに感謝。 2017/09/09
風に吹かれて
18
「伝統という生きた鎖が、ピラミッド時代から現代美術にまで延々と連なっているということ――それこそ、美術の物語の最大の見どころ」(p459)という言葉にあらわされているように時代時代の課題を如何に美術に関わる人々が解決してきたかということに着目しながら著された本。美術の本を読んでいて作品の題名が示されていても図例のないまま解説してある箇所に出会うことも屡々あるが、本書は必ず図例を示した上で作品に触れているので、とても理解しやすい。コンパクト版なので図例は後半にまとめられている。➡2019/11/09
koke
16
再々読。エジプトのように千年安定している美術もある。他方ギリシャでは知識ではなく視覚に基づいて制作するという革命的な試みが始められ、実験はルネサンスで加速した。問題に対する解は別の問題を生み、それに対する解がまた出され、という連鎖が西洋美術史だった。だから変化を進歩と考えることは誤りで、それをもって西洋美術が他の美術に対して優れていると言うこともできない。それがどのような問題に対する解なのかを理解せず、「センス」で西洋美術を鑑賞することはナンセンスだろう。2023/03/19
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