感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
松本直哉
12
真っ白の表紙を開くとそこは冬の世界。通常とは異なる冬春夏秋の部立てにより、ひんやりとした冬の句が始めに並びそれが全体の基調を決定している印象。格調の高い古典的な調べのなかに冷えびえとした距離と小さな違和の感覚がにじむ。「落葉道二度聞きとれずもう聞かず」繰り返される否定と落ち葉を踏む音と相手との距離感。「冬川原独りになりに来てふたり」「り」の繰り返しの美しさ。ふたりゆえの孤独感。他方、「茄子漬の色移りたる卵焼」のような鮮やかな観察の句もある。帯に記された「言の葉は水漬いてゆく葉冬の鳥」謎めいて気になる句。2016/08/10
pirokichi
11
藤井あかりさんの第一句集。先週放送された「NHK俳句~令和の新星」にゲスト出演されていて再読。あかりさんの俳句の特徴は「心を写生する」。〈落葉道二度聞きとれずもう聞かず〉〈蜜柑剝く灯し足らざる心地して〉〈柿落葉大切になる前に捨つ〉〈距離おくといふこと水仙を隔て〉〈羽もなく鰭もなく春待つてをり〉〈青梅や傘畳むとは人悼む〉〈石ころの粗くなりゆく螢かな〉〈茄子漬の色移りたる卵焼〉〈脱ぎきたる靴の遥けき裸足かな〉〈相傘は高くさす傘萩の花〉〈会うふまでは人会ひたれば花カンナ〉好きな句ばかり。序句は師の石田郷子さん。2021/01/16
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