1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
shikada
16
民俗学や文化人類学のフィールドワークで調査に赴くことが、現地にとって迷惑になることの注意喚起をした一冊。事例がたくさん載っている。地域の古老を問い詰める人文科学ならぬ「訊問科学」になったり、借りた古文書や民具を返さなかったり、当事者の意図を無視した発表をしたり、年配の人を丸一日カンヅメにして聞き取り調査をしたり…どれも、「調査してやる」という驕りが根底にある。あらかじめ決まった質問リストをなぞって、関連する感想や気持ちを話されたら「いや、それはどうでもいいので質問に答えなさい」と返すのには呆れてしまう…2024/12/28
100名山
5
著者が師と仰ぐ宮本常一が語る「調査地被害」に誘発され、その文章と著者自らの経験から調査される側の迷惑の例として沖縄本島、西表島、更にはアフリカまで及びます。著者と宮本常一の文章が交互に出てきます。被対象者の調査に対する慣れ、創作や自他の混同、マスコミのやらせや、被対象者への調査結果の還元が語られ、その還元が気が付くと著者が主体になってしまった経験談も語られます。古文書を返還しない話は以前から知っていましたが、学術調査の御旗の下での迷惑窃盗まがいの行為などフィールドワークのむ難しさ問題点と展望を語られます。2024/12/12
のりたま
2
大学生向けのテキストと思ったのだが、どちらかと言えば読み物。同じようなことをしていないかビクビクした。昭和の時代から研究している人は身に覚えのあることが多そうで、読んだほうがいいと思った。わりと誤植が多い。56頁「許されはずだ」、62頁「たままた」、66頁「お話し」(他のページでは名詞の「話」に「し」はない)2025/01/29
らすた
2
宮本常一さんの本は好きでよく読んだのですが、調査される側からみればどうなのかという視点は恥ずかしながら今まで持っていませんでした。そしてその実態は予想をはるかに越えたひどいものであることが、調査者自身から反省とともに示されています。読んで暗澹とした気分になりました。2024/07/30
in medio tutissimus ibis.
1
公に発信できるというのは権力なんだという事をいろんな角度から見せてくれる。今じゃ大なり小なり誰でもできるので、葦につけ葦につけ均衡が取れてきてマナーが向上してきた感じはするけど、ヤミ米とか普通に出てくる時代の話だともっと根は深い。商売でやってるマスコミなんかより、学問の世界だと受益者がどこにいるかわかりづらいから、負担者の徒労感は募るだろう。よそのコミュニティに分け入っていくのはいつの時代も苦労。「種をまくことは誰にもできる。大変なのは草刈りと収穫。そして一番難しいのは、耕されて荒れたとつを元に戻すこと」2024/12/24