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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
shikada
17
民俗学や文化人類学のフィールドワークで調査に赴くことが、現地にとって迷惑になることの注意喚起をした一冊。事例がたくさん載っている。地域の古老を問い詰める人文科学ならぬ「訊問科学」になったり、借りた古文書や民具を返さなかったり、当事者の意図を無視した発表をしたり、年配の人を丸一日カンヅメにして聞き取り調査をしたり…どれも、「調査してやる」という驕りが根底にある。あらかじめ決まった質問リストをなぞって、関連する感想や気持ちを話されたら「いや、それはどうでもいいので質問に答えなさい」と返すのには呆れてしまう…2024/12/28
100名山
6
著者が師と仰ぐ宮本常一が語る「調査地被害」に誘発され、その文章と著者自らの経験から調査される側の迷惑の例として沖縄本島、西表島、更にはアフリカまで及びます。著者と宮本常一の文章が交互に出てきます。被対象者の調査に対する慣れ、創作や自他の混同、マスコミのやらせや、被対象者への調査結果の還元が語られ、その還元が気が付くと著者が主体になってしまった経験談も語られます。古文書を返還しない話は以前から知っていましたが、学術調査の御旗の下での迷惑窃盗まがいの行為などフィールドワークのむ難しさ問題点と展望を語られます。2024/12/12
noko
3
民俗学の人だけでなく、何か現地調査する人達はぜひ読んで貰いたい本。「調査というものは地元のためにはならないが、かえって中央の力を少しずつ強めていく作用をしている場合が多く、しかも地元民の人の良さを利用して略奪するものが意外なほど多い」by宮本常一の言葉に全て表れていると思う。他人に迷惑をかけない、出しゃばらない、他人の喜びを心から喜び合える事、そして威張るな学者。調査というのは地元から何かを奪ってくるのだから、必ずなんらかのお返しをする気持ちは欲しいものだ。借りた資料は必ずお返しすること。本当基本的な事。2025/08/02
のりたま
3
大学生向けのテキストと思ったのだが、どちらかと言えば読み物。同じようなことをしていないかビクビクした。昭和の時代から研究している人は身に覚えのあることが多そうで、読んだほうがいいと思った。わりと誤植が多い。56頁「許されはずだ」、62頁「たままた」、66頁「お話し」(他のページでは名詞の「話」に「し」はない)2025/01/29
頻子
2
学者の人のこういう手記にはびっくりするシーンがあったりするがこれにもアフリカに行ったかと思えば養子になってたり「え???」と一時停止したくなるようなエピソードが出てくる。しかも本題ではない。ものを返さない。奪っていくものの方が驚くほど多い。「事故を起こしてもひき逃げはしない」というための手引書。2025/07/22