内容説明
ピュアなアザラシのディエゴを操って、自分たちに都合の良い「物語」を作ろうと、市の権力者や悪魔、犬や鶏たちもが争うファンタジー・ストーリー。首だけになったロンバックス教授や乱暴者の悪魔が物語のナレーションを奪い合ったり、無数の人間の集合体で出来た市長が「愛のノーベル賞」をディエゴに獲らせようと企てる。はたまた、犬たちが語る摩訶不思議な人間の歴史まで飛び出して…。物語を手中に入れたい者たちの面白おかしいドタバタを、自由奔放なタッチで綴る漫画作品。全ての画材をつぎ込んだという驚異のカラーリングは、フランス漫画の最高峰に位置する記念碑的傑作。
著者等紹介
クレシー,ニコラ・ド[クレシー,ニコラド][Cr´ecy,Nicolas de]
1966年9月29日、リヨン生まれ。フランス・ディズニー・スタジオ勤務を経て、BD作家になる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
コットン
71
シュールレアリストの自動書記のような発想から生まれたバンド・デシネ。架空のニューヨークを舞台に動物、悪魔、権力闘争と色々な面を見せながら進行していく。本作のビジュアル面での特徴として水彩、カラーインク、アクリル・ガッシュ、クレパス、コラージュと多彩な技法がとられていて見応えあり。2023/08/20
キジネコ
50
大衆の意識集合体モンスターである権力の象徴、市長が純朴なアザラシに知恵と文化を注入し「愛」の偶像に仕立てようとする物語、その話者の地位を首だけになった識者ロンバックスと奪いあう悪魔ベルゼハブが公然と蠕動する。圧倒的画力で隙なく仕上げられた獰猛な絵画で構成されたバンドデシネ。世界・文明・進化・信仰・大国のグローバリズム・腐臭を放つ民主主義そして知恵の限界。善悪の姿が病み崩れ、やがて沸点を超える世界の破綻は、終わりの始まりか?それとも堂々巡りの茶番か?手強いけど驚倒の面白さ。こんなん「百年の孤独」以来です。2019/01/17
宇宙猫
17
★★★ フランス的な感性なのか、どう受け取っていいのか良く分からない。ビバンドムがビバンダムくんというのは先に知りたかった。こだわりがあるのかもしれないけど、訳は統一しても良かったんじゃないかな。2020/07/23
ist
6
イマジネーションを膨らませて物語世界にどっぷり浸り絵を眺めるのが正しい楽しみ方なのだろう。とにかく絵がキモイ。知能を持とうとしたアザラシのディエゴ、犬、ディエゴを中から操ろうとする悪魔、語り手の頭だけのロンバックス、ディエゴを利用しようとする市長。 絵が濃くて濃くて深くてキモイ。 メタフィクションもあり、人間の視点、犬の世界の人間の見方。 物語はありそうでなさそうでありそうな、読んだ人それぞれの解釈に任せる、というようなことが書かれている。2014/01/30
Sanchai
2
ユーロマンガ編集長のフレデリック・トゥルモンドさんが薦めておられたので、図書館で借りて読んでみた。BD挑戦2作品目で、フランスでは3冊に分かれていた話を1冊にまとめている。確かに、日本のマンガともアメコミとも違う。読んでいて考えさせられる。考えて読み進めないと何が書かれているのか理解がしづらい。特に、事故で頭だけが残ったなんとかという教授が、なぜ2人も登場したのかが全くわからなかった。市長は確かにキモい。2013/08/13