内容説明
1952年大晦日、21歳で鉄道自殺を遂げた作家・久坂葉子。富士正晴の同人に参加し、『ドミノのお告げ』で芥川賞候補となった文壇期待の才能は、生粋のセレブリティ、そして不良娘だった。ブラームス、ゴールデンバット、酒、ダンスに心酔した美しきモダン・ガールは三人の男を同時に愛するが、やがて行き詰まってゆく。恋に死ぬ直前に書き上げた遺書『幾度目かの最期』、斜陽族の悲哀を書き、『ドミノの世界』の前身となった『落ちてゆく世界』など4編収録。
著者等紹介
久坂葉子[クサカヨウコ]
1931年、神戸川崎財閥の創設者・川崎正蔵の曾孫として神戸に生まれる。相愛女専音楽部を中退後、1949年(18歳)、島尾敏雄の紹介で富士正晴の同人誌『VIKING』に参加。1950年、『ドミノのお告げ』が芥川賞候補となる。数回の自殺未遂を経て、三人の男性と同時進行の恋愛が立ち行かずに悩み、『幾度目かの最期』を書き上げた直後、1952年大晦日の日に阪急六甲駅で鉄道自殺を遂げる。享年21歳(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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あ げ こ
7
「入梅」素朴な悲しみと、決して表には出せぬ、羨望と嫉妬。だが言葉は少なく、主人公の心はどこまでも、すっきりとしている。別れと引き換えに抱きしめた、ささやかな幸せ。決意の強さと、苦労を知り、昇華し終えたものの、冷静さが好ましい。「華々しき瞬間」自らの心が、自らの、恋をするために作り出した人格に飲み込まれた瞬間の、幸福。甘やかな幸せはそのまま、魔性を秘めた彼女の、破滅をも招く。人の心を捉え、惑わせ、だが最後は、熱情に生きた。切実で、したたかで、意外なほど、不器用な激しさ。知らず零れたのは感嘆と、ため息か。2014/10/19
はちみつぐすり
0
表題作の冒頭に「うまれは火星日(略)最も強烈に、そのエネルギーを放射」というのは久坂本人を指すのかと思った。そんなアグレッシブな面の裏に、本能的に生きることを受け付けない性質も持ち合わせた彼女。そのアンバランスさが作家・久坂葉子たらしめたのかと。2011/09/26
かがみん
0
21歳の僕に、こんなに「人間」が描けただろうか。2011/09/23
ぱーぷる・ばんぶー
0
芥川賞候補になりながら、21歳の若さで、昭和27年の大晦日に自死した久坂葉子の戦前戦後の上流階級の女性を描いた小説3篇と私小説のような遺稿。2010/11/29
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