内容説明
演技の共同体と演者たち。その年の祭礼だけで上演され、台本や記録を残さないことが多い「俄」。世相風刺や機知に富む滑稽な芝居は、いつ頃から作られ、どのように上演されてきたのだろうか。北部九州での現地調査から、制作と上演の様子をつぶさに観察し、この即興芸能が創出される現場をリアルに捉える。
目次
序章 本書の視座―現代民俗学としての民俗芸能研究に向けて
第1章 “芸”としての俄の成立―幇間芸から民俗芸能へ(俄の誕生―近世大坂での展開から;近代以降の俄の変遷―福岡県を事例に;今日の俄とその特徴―民俗芸能としての俄へ;おわりに)
第2章 向上会の誕生―大正期における祭礼の資源化と演者集団の組織化(大正期における高森町の地域概況;南郷谷の夏祭りから熊本県下の夏祭りへ;「肥後の三馬鹿騒ぎ」の誕生;祭礼の改良にみる地域振興としての風鎮祭;向上会の結成;おわりに―風鎮祭における「大正一五年」という時期)
第3章 俄を演じる人々―“演技の共同体”の継承実践(向上会の活動内容;風鎮祭における向上会の活動;向上会の人々;向上会員になる;高張として関わる;おわりに)
第4章 俄の演技が生まれるとき―やり取りの“場”からみる演技の創出(風鎮祭における俄の演じられ方;俄の演技の作られ方;俄の縁起を生み出すもの―即興と定型;おわりに)
終章 結論―現代における民俗芸能の継承プロセスと創造性
著者等紹介
松岡薫[マツオカカオル]
1982年福岡県生まれ。2018年筑波大学大学院人文社会科学研究科歴史・人類学専攻修了、博士(文学)。専門は、民俗学と民俗芸能研究。現在は、天理大学文学部歴史文化学科考古学・民俗学研究コース講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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