内容説明
1958年をピークに斜陽産業へと転じた日本映画界はいかにして時代の変化に対抗・対応していったのか。映画会社の戦略、俳優の組合運動、幻の映画『祇園祭』をめぐる騒動など、映画を広く産業としてとらえ、作家・作品中心ではない、日本映画史のオルタナティヴを描き出す。
目次
1 映画産業界の経済と経営(監督が映画を撮れなくなったとき―東宝サラリーマン喜劇“社長シリーズ”松林宗恵と“無責任シリーズ”古澤憲吾;東宝歌舞伎と東映歌舞伎―斜陽期の映画会社とスターの延命装置としての舞台公演;興行戦略としての「青春余命映画」―『愛と死をみつめて』と吉永小百合;小津安二郎の興行戦略―『彼岸花』にみる作家性と企業性の折衝)
2 映画産業の拠点としての京都(京都と時代劇再考―東映剣会殺陣師を中心に;戦後の日本映画における西陣機業と地域表象―『西陣の姉妹』を手掛かりに;絵師と映画監督―時代考証にみる甲斐庄楠音と溝口健二の通底性)
3 映画を取り巻くメディア環境(『君の名は』の歌声―戦後日本の「メディアミックス」と聴覚文化;一九五〇年代の日本映画産業と海外市場へのアプローチ―国家支援を求めた動きとの関連で;グラビアと啓蒙―戦後初期の『近代映画』が伝えたもの)
4 映画『祇園祭』を巡って(映画『祇園祭』と京都;近現代史のなかの映画『祇園祭』―もう一つの明治百年;中村錦之助の『祇園祭』前夜―五社協定下におけるスター俳優の躍進と抵抗;『祇園祭』論争に見る監督と脚本家の権限―一九六〇年代における著作権法改正の議論を背景に;制作社日誌からみる映画『祇園祭』―歴史学的分析の試み)
著者等紹介
谷川建司[タニカワタケシ]
早稲田大学政治経済学術院客員教授。映画史、大衆文化研究(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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