内容説明
横溝正史の幻の新聞連載小説、発表から77年を経て初の単行本化!
著者等紹介
横溝正史[ヨコミゾセイシ]
1902(明治35)年5月24日、兵庫県神戸市生まれ。1920(大正9)年3月に神戸二中(現・兵庫県立兵庫高等学校)を卒業後、第一銀行(現・みずほ銀行)神戸支店に就職。1921(大正10)年に『恐ろしき四月馬鹿(エイプリル・フール)』でデビュー。家業の薬局経営を経て、1926(大正15)年に大手出版社・博文館に転職。編集者として勤務する傍ら、小説を執筆。1932(昭和7)年からは作家として独立し、金田一耕助を探偵役とする探偵小説をはじめ、数多くの作品を執筆。1970年代以降は、多くの作品がテレビドラマ・映画化され、国民的な人気作家となる。1981(昭和56)年12月28日に永眠(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
181
学生時代は、金田一耕助ブームで横溝正史の作品を沢山読みました。久々の横溝正史しかも幻の作品、ワクワクしながら読みました。戦時下のため、探偵小説ではなく、ジェットコースター・メロドラマでした。当時の読者は、毎回楽しみながら読んだのではないでしょうか?本作が私の地元の新潟毎(日)日新聞連載だったのも、何かの縁を感じます。 http://www.nishogakusha-u.ac.jp/news/?contents_id=8422018/04/17
ちょろこ
78
万人うけする横溝作品、の一冊。さすがこの時代に新聞連載されていた作品だけあって、おどろおどろしさ無く、万人うけするストーリー。ヒロイン 有為子に次々と襲いかかる荒波。対して彼女はどう乗り越えていくのか、ドラマのように先が気になる展開だった。これは当時の国民も同じ気持ちで次の日の朝刊が楽しみだったんだろうな。様々な氷のようなわだかまりが溶けて心からほとばしる数々の言葉…まさに春が到来し雪割草が一斉に咲いたような情景が浮かんだ。素敵な装丁も印象に残る作品。2018/04/26
keroppi
62
戦時下に書かれたという横溝正史の新聞小説にして、メロドラマ。2段組みで400ページを越す長編、ちょっと辛いかなと思って読みだしたのだが、とんでもない。この面白いこと!新聞小説らしく、各章ごとに、起伏があり、展開が早く、先を読みたくて仕方がない。戦時下で思うように書けない自分自身が投影されていたり、金田一耕助の原形が描かれていたり、興味は尽きることがない。やはり、横溝正史の描写力は凄いと実感した。また、この小説発見の過程が描かれた解説も探偵小説のようで面白かった。2018/06/01
藤月はな(灯れ松明の火)
51
婚約当日に相手からの不義理から出生の謎を背負わされた挙句、家族を失った有爲子。出生の鍵を握る画家を探す為に東京へ出るも彼女の運命は二転三転し・・・。新聞掲載で追っていた読者はさぞかし、ヤキモキしながら続きを待っただろう。それは邂逅のニアミス、悪意の介入、助けの糸を頼ろうとした矢先の流転など、運命は有爲子を苛め抜くからだ。賀川には「恋女房に当たるな!甲斐性を見せんかい!」と思うも我が家のかつてに重なり、自分のアドバイスへの余りの的外れさに頭を抱える。そして賀川に苦難を与える梨江夫人の屈託ぶりは夫が原因だった2024/02/10
あじ
50
過去に単行本にも文庫本にもなっていません。正真正銘の最新刊です。横溝正史作品に素養ある読者なら、鋭い考察で執筆の裏舞台を嗅ぎ当てる鳥肌本となるのでしょう(金田一の影などを)。私は純粋にネームを剥がして読みました。本書はミステリー凍結時代に、氏がはじめて手掛けた通俗小説。人に騙され転がされながらも人の心根の深さに助けられながら、二本の足で立ち上がろうとする女の気概を描いていたと思います──。◆巻末に資料、次女瑠美さんの寄稿など収録。【購入本】2018/04/08