出版社内容情報
とうめいな野原にとうめいな野原を 痛むのは縫い合わすときだけ
第一歌集『水の聖歌隊』で現代歌人集会賞を受賞した著者待望の第二歌集。
「この歌集は夢と同じ言葉で書かれている。ここまで徹底して静かな、酸素のうすい夢の言葉で綴られた歌集が、かつてこの世にあっただろうか」(大森静佳さん/栞より)
「ちぐはぐとおもわれた言葉たちはおそらくあるべくしてそこにある。少なくともこれは笹川さんによってちからを吹き込まれた表現なのだとわかる」(江戸雪さん/栞より)
「この歌集で提示される鮮やかな詩情には驚かされる。(略)歌人は、言葉の鮮度の生命線として、敢えて「詩の痛み」に手を伸ばし、自らの詩を精錬する」(石松佳さん/栞より)
【収録歌より】
いつだって造語のようなすずしさで秋は来るのださびしくはない
簡潔な雨の降るなか思い出す〈時間〉には助手がいたことなどを
春はなおさらあなたの中に教会が二つ見えその小さめの方
沐浴と古地図、それからうつくしい草の作法のひとだあなたは
空自身が壊れぬように空がまだ試さずにいる一色のこと
【著者プロフィール】
笹川諒(ささがわ・りょう)
長崎県生まれ。大阪大学文学部卒業。2014年より「短歌人」所属。歌集『水の聖歌隊』(書肆侃侃房)で第47回現代歌人集会賞受賞。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
rinakko
6
〈牛乳とレモンタルトの日々と呼ぶ読書が妙に楽しい時期を〉〈箔押しのようにせつない馬と馬(こころの左端と右端で生きる)〉〈青白く月はこぼれて神職を選んだユリスモールのその後〉〈図書館と小雨の世界 カタルーニャ語辞典に大きな瞳があった〉〈言霊と猫は似ている ドビュッシー「沈める寺」を聴きつつ思う〉〈赤い龍、赤い月、銀河の音の十三番と占い師言う〉〈冥府、と口に出すとき声は葉の緑それから夢の紫〉〈この世のことはほぼ難しいうっすらと同時に思うレモン・巡礼〉〈空自身が壊れぬように空がまだ試さずにいる一色のこと〉2025/09/09
ディディエ・メラ
4
Xでフォロワーが紹介していたので楽しみに手に取るが、普通に日記の域を越えない言葉ばかりだった。短歌って、もっと言葉にエッジがあったり、あり得ないような言葉の組み合わせを楽しむものだと思っているので、痺れるような文字並びを期待する人には合わない歌集。生活習慣とか生活環境が凡庸ならば、その中から生まれて来る言葉にもそれが反映されても致し方ないのだろうか。真ん中辺りまで読んで挫折しました。2025/09/28
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