内容説明
郵便配達をしていた俺は故郷の「くに」から逃げてきた。妻のカルラと幼い息子とともに「島」で不法滞在している。買い物をした帰りに乗っていた地下鉄が故障で止まってしまい、右も左もわからない場所で降ろされてしまった一家。なんとか家にたどり着こうとあれこれ画策するが、やることなすことすべてが裏目に出て―。周囲から存在を認められず、無視され続ける移民の親子は、果たしてどうなるのか?
著者等紹介
アドルフォ,リカルド[アドルフォ,リカルド] [Adolfo,Ricardo]
1974年にアンゴラに生まれるが、アンゴラの独立により幼少時にポルトガルに帰国。2003年に短編集『すべてのチョリソーは焼くためにある』でデビュー。ドラマや映画の脚本の執筆や絵本も発表するほか、広告界でも国際的に活躍している
木下眞穂[キノシタマホ]
上智大学ポルトガル語学科卒。ポルトガル語翻訳家。『ガルヴェイアスの犬』(ジョゼ・ルイス・ペイショット)で2019年に第5回日本翻訳大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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fwhd8325
65
日本では、移民を考える機会が少なく、この物語もどこか他人事のように思ってしまうかもしれない。この作品は2009年に発表されている。そこから15年の時間は、この物語を考える時間を与えてくれたようだ。どっかユーモラスに感じる物語だが、実は辛辣で、ある種の恐怖さえ感じる。小説としてとても面白いと感じました。2024/05/01
ヘラジカ
50
言葉が全く通じない異国を彷徨う家族。一種の不条理劇と言えようか、非常にユニークなロードノヴェルとも読める。とにかく行動が裏目に出てドツボにハマっていくのだが、それも完全に理不尽な出来事のせいばかりとも言えない。言葉の分からない島国で生活せざるを得ない背景、語り手の性格や自我が露わになるにつれて、リアリスティックな同情や反感を覚えてしまう。貧困や、”男として父親として”と言ったパターナリズムの軛に繋がれた物悲しさ。終着点はどこか気になって一息に読んでしまう程の面白い小説だった。開放的なラストも大好き。2024/03/06
りんご
47
異国で妻と幼い子供と一緒に道に迷う。言葉は全く通じない。文化圏も違う。どうやら故郷で何かしでかして逃亡して今に至るよう。所持金は少ない。なんか色々詰んでる男の好き勝手な言い分を聞かされまくった。言葉が全くわからないのは非常に厳しい。日本で暮らす外国人は増加傾向。それを思うと単純に読み捨てられない問題提起がされてる本かも。2025/01/14
R
40
「くに」で犯罪を犯したため、「島」に逃げてきた子連れ夫婦の物語という設定だけども、同情よりも憐れみを覚える生きざまが描かれていて、なんともいえない気分になった。やることなすこと裏目に出る男の卑下した言動にもがっかりさせられるが、自己中心的な上に直観で生きている感じが端々から感じられて、それでも会話だけ見ていると可哀そうな部分も見えてきたり実に人間らしい姿が興味深い。結局、ずっとこうやって生きていくんだろうな、そしてたくましいからなんともないんだろうなと思わされる。2024/08/12
空猫
31
「死んでから」とは「社会的な死」の意。不法に「島国」にやって来た男とその妻子。言葉も通じず字も読めない彼らは見知らぬ異国の地で迷子になる。手持ちのお金も少なく、子供はぐずり、妻は不満が爆発するし、やる事なす事ドツボにハマっていく…こんな不安な状況があるだろうか。移民の問題は日本でも大きくなりつつある。喜劇のようだが社会から弾かれた人々の叫びが聞こえてくる、力作であった。他の映画作品もチェックですな。2024/08/28
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