内容説明
知り合いから頼まれて顔も知らない人と待ち合わせをする羽目になった俺(水上)。この人と思ったキザキさんは別の男と去ってゆき、代わりに現れたサカナさんに誘われるままに不思議な居酒屋で飲み明かし、まさに迷宮にはまり込んでゆく、心理的ロードムービーのような作品。ほかに書き下ろし「Maxとき」も収録。第四回ことばと新人賞受賞作。
著者等紹介
福田節郎[フクダセツロウ]
1981年神奈川県生まれ。「銭湯」で第4回ことばと新人賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アキ
97
著者は1981年生まれ。「銭湯」と「Maxとき」の2篇の内、表題作のみ読了。第4回ことばと新人賞受賞作。どこに銭湯が出てくるのだろうと思いながら最後まで読んだ。主人公の僕と同じ目線で、会う人が次々想定外の言動を取り、落ち着かないまま、どこに連れて行かれるのか不安な気持ちを持たせる物語。読んでいて、こんな宙に浮いたような落ち着かない気分になったことがある様な気がしてくる。周囲を観察しているつもりが、いつの間にかその周囲から自分の評価をされているのもなんだかわかる気がする。最後にイメージとしての銭湯で終える。2024/01/06
Karl Heintz Schneider
21
ひょんなことから出会った男女が意気投合したほどでもないのに一緒に飲みに行き、そのうちに何人もの人間が乱入してきて着地点が不明のまま終わるという不思議な話。銭湯が舞台の話かと思ったら全然そんなことはなくて最後に主人公がぼそっとつぶやく言葉の中に「銭湯」というワードが含まれるだけ。何故このタイトルにしたのか極めて不可解。予約した列車の座席には見知らぬスキンヘッドでガタイのいいコワモテの男が座っていた。第二話「Maxとき」はこんな出だしで始まるのだがその後もどんどん話題がずれてゆきわけのわからないまま終了。2024/03/25
石橋陽子
16
次から次へと着地しない話題が続き、白黒はっきりさせたい性格の私への訓練のような本。だが大変面白く展開が気になり一瞬で読了。読者をはまらせる力天下一品。一文が長く癖があるが文体は好き。よく分からない相手と急に一緒に飲み始めるとかサラリーマンにはある話し?墓石に刻む文字に対する雑談が面白く「生きる喜び」なんて書かれたら、生きてていいよねというあの世からのメッセージで墓参りに行けなくなりそう。1文字シリーズなら、愛は説教臭いらしい。でも釣ならバシッと決まってシンプルに格好良いとか何の話?って感じだけど面白かった2024/03/12
Mark.jr
5
こんなにもリアリズムから離れないのに、どこに連れて行かれるのか全く予想がつかない小説を読んだのは、福永信氏の「コップとコッペパンとペン」以来ですよ。奇矯な人物の登場で話が進んで行く感じは演劇的で、戯曲として書かれた方がスッキリ読めたかもしれませんが、主人公の脳内での連想式脱線話は、小説ならではの面白さです。難点は、はた迷惑な人物しか出てこないので、場の状況に流される主人公を含め、登場人物に好感が持てないところ。なので、表題作よりも登場人物数の少ない書き下ろしの「Maxとき」の方が、個人的には好きでした。2025/03/28
O
4
場面や登場人物の入れ替わりが激しく、状況を整理するのが大変だった。 居酒屋をハシゴするところが、夜は短しっぽさがあって好きだった。ご縁に導かれるまま過ごすのも悪くない。2023/10/31