内容説明
五年間同棲している私の彼女、ジョンユンには四人の大親友がいる。ミンジ、ジヘ、ジヨン、スジン。「ジョンユンの彼女なら、私たちの友達も同然でしょ」彼女たちはみんな私に会いたがるけど、私はその誰にも会ったことがない。ジョンユンに誘われても、誰の結婚式にも行かない。ついにジョンユンの親友たちに会ってみることを決めた日、かつて私が憧れを抱くも苦い決別を迎えたひとりの女性から手紙が届く。「非婚式にご招待します」。クィア・労働・女性問題など、今を生きる女性たちをときにリアルに、ときにさわやかな余韻で描き出すチョ・ウリ初の短編集。表題作「私の彼女と女友達」など八編を収録。初邦訳。
著者等紹介
チョウリ[チョウリ]
趙羽利。2011年、短編小説「犬五匹の夜」で大山大学文学賞を受賞し作家デビュー。女性、クィア、労働に関心を寄せて執筆している
カンバンファ[カンバンファ]
姜芳華。岡山県倉敷市生まれ。岡山商科大学法律学科、梨花女子大学通訳翻訳大学院卒、高麗大学文芸創作科博士課程修了。梨花女子大学通訳翻訳大学院、漢陽女子大学日本語通翻訳科、韓国文学翻訳院翻訳アカデミー日本語科、同院アトリエ日本語科などで教える。韓国文学翻訳院翻訳新人賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ケンイチミズバ
80
行動のひとつひとつにためらいがあり、損な人生だ。LGBTQだからというだけでなく一歩前進できないのは弱い立場を自負しているから。社会はそこそこ厳しくて自分と直接関係のない人にそこまで気を使わないのが普通なのでは。一人一人の声の大きさは、組織やビジネスや人間関係でもまれたからとも言える。自分を卑下し過ぎてあきらめたり落ち込んだりため込むのは自分の思い込みのせい。自分は販売員でしかないという気持ちがお客のクレームを跳ね返せない。レズビアンの私は愛する人の親友の結婚式にも出産祝いの席にも迷惑かも知れないって。2023/06/07
星落秋風五丈原
25
「私たちがハンドルをつかむとき」あまりLGBT設定は前面に出てこない。「11番出口」なくなっているはずの11番出口を探しに来る人達。「ミッション」モノのように貸し出されこき使われる人材。「私の彼女と女友達」かつて告白めいたことをした相手の子供の祝い事に行くか迷う。「ねじ」外れてしまったねじが象徴するもの。「物々交換」半ば押しつけのような形で甜瓜を貰う羽目に。「ブラック・ゼロ」クレーマーだが何も買わない客=ブラック・ゼロに対してもひたすら謝り続けなければならない理不尽。「犬五匹の夜」実際にあった出来事が元。2023/08/15
ヘジン
10
短編集。恋愛・性愛がメインじゃないレズビアン小説。わかりやすい結末がある話ではないものが多い。表題作がよかった。2023/09/25
まこ
8
韓国の普通の女性たちが日々感じているもやもやを綴っている。どの話も文体が型から抜け出したいけど、型にはまっていないとやっていけないもどかしさを感じる。恋人の友達って付き合わないといけないのかな。店にくるお客様は大事だけどトラブルメーカーみたいな人のいうこと聞いてスタッフをないがしろにしていいのか。本当はもっと声を大にして言いたい。けど、言いずらい。2024/12/15
フランソワーズ
7
▲多くの登場人物が性的マイノリティであることから、「クィア文学」に括られがちだけど、必ずしも主旨はそうではない気がする。特に表題作は、他人と接点を持つことにナーバスになっている人物を描いている。▲いつもながら感じるのは、韓国社会の生きづらさ。『ミッション』、『ブラック・ゼロ』、『ねじ』で描かれる職場は「超ブラック」。結局は客や取引相手などから、そういう職場にならざるを得ないのでしょう。▲お気に入りは、『物々交換』。2025/02/05