目次
1(たんぽぽ;首のちから;窓、その他 ほか)
2(コラール;夏はみな;グラジオラス ほか)
3(かまきり;くりかえし;ひるがお ほか)
著者等紹介
内山晶太[ウチヤマショウタ]
1977年、千葉県生まれ。1998年、第十三回短歌現代新人賞。2012年、第一歌集『窓、その他』(六花書林)を刊行。翌年同歌集にて第五十七回現代歌人協会賞。「短歌人」編集委員。「外出」「pool」同人。現代歌人協会理事(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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あや
22
短歌人編集委員の内山晶太さんの第一歌集の再販。初版の刊行は2012年。私がサッカー観戦に明け暮れていた時である。当時は短歌は読書はしても詠歌は中断していた。再販にあたってのあとがきがよい。コンセプトのない歌集にしたかったとのこと。『窓、その他』はコンセプトのない歌集にふさわしいタイトルと思う。 てのひらに貰いしお釣り冬の手にうつくしき菊咲きていたりき/みずからを遠ざかりたし 夜のふちの常磐線の窓の清冽/シートベルトをシューベルトと読み違いたり透きとおりたり冬の錯誤も 千葉県のご出身で勝手に親近感2024/09/19
qoop
9
都会で働く勤め人の日常の歌。疲弊した目に映る情景と響き合う情感をみずみずしさでもって書き綴る。諦観の奥から新鮮な驚きが飛び出し、ドライさに隠れたデリケートさが顔を出す。表題にある〈窓〉は、そうした内外を繋ぎ、覗かせるものか。/床に落としし桃のぬめりににんげんの毛髪つきて昼は過ぎたり/わが胸に残りていたり幼稚園ながれいでたりろうそくの香に/夏まひる見渡すかぎりの炎天にサラリーマンは帽子かぶらず/ジオラマのなかにちいさき遊園地未来永劫死亡事故無し/目に蓋のある人体のかなしさを乗せしみじみと終電者ゆく2023/02/13
のりたま
5
「通過電車の窓のはやさに人格のながれ溶けあうながき窓みゆ」私も雑踏の中で人格が溶けあう感覚を詠んだことがあるが、これはうまいとおもった。目としての窓、自我や思考が流れるイメージが一冊の中で何度も繰り返される。鼠の歌は「城の崎にて」を踏まえるか。「わが死後の空の青さを思いつつ誰かの死後の空しかしらず」子猫の死の連作として読むとまた別の趣がある。「目に蓋のある人体のかなしさを乗せしみじみと終電車ゆく」使うなとよく言われる「かなしさ」「しみじみ」という言葉を使っているからこそ心に響く。2024/09/08
mascuma
2
春の雨とすれるように降りつづくほのあかるさへ息をかけたり/カーテンはひかりの見本となりたれば近寄らず見つ昼のなかほど/思い出が油となりて流れだす夜を釣り人のごとく立ちおり/ジオラマのなかにちいさき遊園地未来永劫死亡事故無し/夏過ぎてなお夏の日を閉ざしおく虫籠のなかにある涅槃〔ニルヴァーナ〕/ぶらんこの鎖つめたくはりつめて冬の核心なり金属は/開かれし傘ことごとくはりつめて飯田橋陸橋を行き交う/目に蓋のある人体のかなしさを乗せしみじみと終電車ゆく2024/02/13