感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
けんとまん1007
40
自然を見つめる歌人の眼に独特のものを感ずる。そんな目線を持てるだろうか。1冊の歌集の中にも、変化が垣間見える。あとがきで、その理由が少しはわかるように思う。人は、自分の体験・思索により、変わりうるものだということを再認識。2023/03/03
双海(ふたみ)
13
一九五五年五月、群馬県伊勢崎市生まれ。現代歌人協会賞、ながらみ現代短歌賞、寺山修司短歌賞、迢空賞を受賞。「歌林の会」会員。「キャベツのなかはどこへ行きてもキャベツにて人生のようにくらくらとする」「表層を皮剥けばまた表層の表層だけのキャベツが重い」「あなたとのあいだに菊の黄をおきて沈黙の間は黄を見ていたり」「白雲木の花咲く下のベンチにて君はこころを濃くして待てよ」2023/06/29
qoop
8
モノのスケール感が大小変化する、高い発熱時に感じる不安定な認識の有り様。マクロとミクロの融合は詩の常道ではあろうが、雄大な言葉遣いの裡に潜む繊細さを思うと、過剰によって保たれるバランスは真摯に世界との距離感を取るための企てかと。/「みなとみらい」のこんな街路樹の一本がかのダム底の家より明し/三十五万回「狂」という字を思いみよ入院者三十五万人の「狂」/重力の自滅をねがう日もありて山塊はわが濁りのかたち/裁判所のできあがりゆく床下にとじこめるべき闇がきている/幽霊を真上から見てみたきなりぞくぞくと闇を泳ぐ幽霊2021/10/10
mascuma
5
八月をふつふつと黴毒のフリードリヒ・ニーチェひげ濃かりけり/白光にめつむりている白き猫ほあほあと死はふくらみてくる/月の下をながるるなかにわれもあり濁れる水を秘めてゆくなり/三十五万回「狂」という字を思いみよ入院者三十五万人の「狂」/みはるかす大気にひかる雨燕にわたくしの悲は死ぬとおもえず/ときに樹は凄まじきかなおうおうと火を吐くごとく紅葉を飛ばす/冷凍庫から剥製に出す大鷹の死にて久しき血はしたたらず/会葬に生者のみ集いくるふしぎ空に級木の葉がひるがえる2022/02/02
toron*
3
橋として身をなげだしているものへ秋分の日の雲の影過ぐ 捨てられし自動車が野に錆びていて地球時間に浸かりていたり 俺はいわゆる木ではないぞと言い張れる一本があり森がざわめく まぼろしに天壌響くことがあり花野をジャンヌ・ダルクのジャンプ 今年読んだ中で、個人的には一番すごかった…付箋を貼りまくってしまった。言葉の組み合わせ(俳人でもあるのでニ物衝撃?的なことが上手い気がする)や、発見の歌も多く、自分がやってみたかったことにかなり近い気がする。樹の短歌が多かったけれどどれも良かった。もっと読んでみたいと思う。2022/08/13