目次
O脚の膝
星か花を(たくさんのおんなのひとがいるなかで;世界の関心;そらをとぶかも―テーマ「義経忌」;せ、せ、せかい;スクンビットソイ33;28の女のあし;わかった)
著者等紹介
今橋愛[イマハシアイ]
1976年大阪生まれ。歌人。大学在学中に岡井隆の授業で現代短歌に触れ、二十三才で短歌をつくりはじめる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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qoop
7
ひらがなと改行の多用がとにかく印象的で、改めて詩歌が備えるタイポグラフィックな魅力を再認識した。口に出した際の音の響きと目で見た際の形の面白み、双方を意識した詩作は珍しくはないが、目への意識がここまで強い歌集はなかなかないかも知れないな、と。/濃い。これはなんなんアボガド?/しらないものこわいといつもいつもいうのに/おでこからわたしだけのひかりでてると思わなきゃ/ここでやっていけない/としとったひともわかいひともふまじめもまじめもせいきがついたらおとこ(/=改行)2021/08/22
りっとう ゆき
5
「わかるとこに/かぎおいといて/ゆめですか//わたしはわたし/あなたのものだ」「くもがねー/ちぎれて足跡のようだよ。/こんとんをどけたあとがみたいの。」「きのう家。/軽くこわれて かあさんは/こんな日にだけ むらさきのしゃどうを」ああすごいなあと思う。空間とかひらがな、行間の中こんなにも熱いものが。ほんとにすごい。2021/11/14
ぷほは
5
穂村弘の紹介で、初めてこの人の歌に触れた時の衝撃を今でも覚えている。「ゆれているうすむらさきがこんなにもすべてのことをゆるしてくれる」。全てが平仮名であることの迫力に加え、U音の頭韻が気持ちいい。総てを赦す薄紫、どんな色の藤袴なんだろう。「たくさんのおんなのひとがいるなかで/わたしをみつけてくれてありがとう」。花鳥風月も近代的自我の意識も、ここでは蒸発してしまっている。前衛短歌運動の懊悩も、ニューウェーブの軽やかさもないままで、ただ淡々と日常のラディカルさがギリギリ三十一音の定型に憑いている。その黙示録。2021/07/29
たおちゃん
2
ちからなくさしだす舌でだらしないのがみたいんです今みたいんです/過去にだれともであわないでよ 若いきすしないでよ 今 産まれてきてよ/お花見にいきましょうね日曜の昼間ふたりでねもうしんどいね//ここまで鋭敏にかつ的確に表す言葉を持っていたかどうかは別として、私は確かにかつてこの空気の中を泳いでいたし、こういう恋をしたし、こういう失望をしたし、その結果ついたまま治らない傷のあとも確かにあるし、でももうすべて知らない場所で、戻りたいけど戻れなくてぜんぶ幻だったみたいでかなしいなあみたいな気持ち。2021/08/05
糸くず
1
特異なスタイルを持つ歌人である。改行、分かち書き、ひらがなと句読点の多用。ポップでかわいい文体とは裏腹に、歌は凄まじく重く殺伐としている。この歌人にとって、人との関わりは常に不安や緊張を強いるものであって、恋人や家族といる時ですら心が安らぐことはほとんどない。甘さのすぐ隣にいつも痛みや苦しみがある。短歌を歌うことによってだけ、かろうじて息をしているかのような印象さえ見受けられる。この息苦しさと切実さは只事ではない。間違いなく傑作である。2023/08/11
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