目次
名画座
悪友
はためく
飛び級
海鳴りの語尾
戯れに花
猫はどこへ行く
20ゼーロを賭けて 漫画・アニメ『血界戦線』より
さらば楽園 漫画『ハイキュー!!』より
DUNKIRK 映画『ダンケルク』より
サードランナー 漫画『おおきく振りかぶって』より
Krakow
いつかの冬
ゴーレム
メフィスト
由来
虹を
強くてニューゲーム
でも窓辺から
天国と春服
短い脚立
幽霊とスノードーム
生前
著者等紹介
榊原紘[サカキバラヒロ]
1992年愛知県(三河)生まれ。2012年「京大短歌」に参加。2015年未来短歌会(黒瀬欄)に入会。2019年第2回笹井宏之賞大賞受賞、第31回歌壇賞次席。現在は同人「遠泳」にのみ参加している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
だまし売りNo
15
「ローソンが潰れてできた大きめのローソン 性善説を信じる」(32頁) 神の見えざる手が働く市場の性善説を信じたくなる出来事である。日本では市場原理を敵視する公務員的管理主義の発想が根強い。店舗の新規出店を市場原理に委ねると、チェーン店が個人経営を店舗を駆逐する一方、チェーン店は採算が取れなくなれば簡単に撤退してしまい、住民は買い物難民になるとする類の見解である。しかし、市場原理は需要があれば需要に応えるものである。むしろ、公務員的な管理主義は需要ではなく現状の供給から逆算して考えがちである。2021/09/28
冬見
13
「傘のなか青信号を待ちながらきみには告げないきみの悪癖」「ほの暗い眼窩に月を嵌め込んでゆるされずともこの道を往け」「魂に骨があったらいいのにね。焼け残ったらお守りにする」「楽になってほしいだなんて 憎しみの眼窩に嵌まる月をください」生々しい傷痕のような歌。2021/01/16
inarix
8
日々過ぎてゆく風景を、季節のふるまいを、心の揺らぎを、言葉の持つ鋭さを、生のままにちぎっては投げ、ちぎっては投げて、読者にぶつけてくるような330首の短歌。つぶやきよりももっと鮮明に、歌うよりももっと鋭利に、忘れたくない記憶や感情はみぞひともじに凝縮されて、たくさんの人に詠まれて永遠になる。今SNSを通して20代・30代におきているという短歌ブーム。実際、若い歌人さんたちの歌集を読むと本当に心揺さぶられることが多い。友人や恋人とのひとときを読んだであろう歌にも、どこか付きまとう寂しさが棘のように引っかかる2023/08/28
駒場
6
「わかりやすい」短歌集だなと感じるのは私がオタクでありこの人がオタクだからであろう。『おおきく振りかぶって』や『ゴールデンカムイ』を題材にした歌もあり(後者は明言されていないが)、創作活動をしているオタクも手に取りやすい歌集。ウェットな感情を歌いながら、そこに男女の肉欲っぽさが滲まないのが読みやすさの理由かもしれない。/悪友の悪の部分として舌が西陽の及ぶ部屋でひかった/もう寒い海にあなたを連れていき結婚式の日にちを訊いた/立ちながら靴を履くときやや泳ぐその手のいっときの岸になる2023/12/21
ぱせり
4
怒りや苦しみは、歌になったときから、瑞々しいほかのものに変わっていきそうではないか。書き残した(いや詠み残した?)瞬間瞬間の欠片から、小さな緑が芽吹いていきそうな、こんな風に言ったら叱られるかもしれないが、その怒りは、歌になるとき、ぎゅっと詰まった小さな種にもなるのではないか。2021/10/01