内容説明
日本統治時代に生まれ、ほぼ一世紀を逞しく生き抜いた母チョモン。半島南部のとある海辺風景をバックに、露草のように生きた母の生涯を叙情あふれる筆致で描く。ハン・ガンの父で韓国を代表する作家ハン・スンウォンの自伝的作品。
著者等紹介
韓勝源[ハンスンウォン]
1939年、全羅南道の長興で生まれ、徐羅伐芸術大学文芸創作科を卒業、1968年、大韓日報の新春文芸に短編「木船」が当選して創作活動を開始。現代文学賞、韓国文学作家賞、李箱文学賞、大韓民国文学賞、韓国小説文学賞、韓国海洋文学賞、韓国仏教文学賞、米国桐山環太平洋図書賞、金東里文学賞など受賞多数
井手俊作[イデシュンサク]
1948年、福岡県大牟田市生まれ。1974年、早稲田大学政治経済学部卒。新聞社勤務を経て2009年に韓国文学作品の翻訳を始める(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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lily
93
著者自身ではなく母を軸とした自伝は初めてで斬新だった。20世紀の時代劇を鑑賞しているかのような表象。著者にとって、母とは、私をこの世に存在させた宇宙的な根であり、私を救い、慰め、痛みを癒してくれる女神だった。韓国人による自伝ほど面白いものはない。日本との関わりも外せないし風変わりな韓国人的思想、韓国文化に触れられる躍動感は尽きることがない。もっと読みたいのに翻訳本がなくて残念。娘ハン・ガンを読み尽くそう。2021/02/20
かもめ通信
21
現代文学賞、韓国文学作家賞、李箱文学賞等数々の受領歴を持ち、近頃では“ハン・ガンの父”という紹介文が追加されることも多くなった韓国文学の文豪による自伝的小説。母という存在の大きさを感じさせる物語でもある。2022/06/23
Sachiko
1
『少年が来る』『菜食主義者』等で有名な韓国のハン・ガン作家の父が自分の母のことを書いた半自伝的小説。ハン・ガン氏に至る家族の歴史だけなく、日清戦争の発端ともなった東学農民運動で祖先が亡くなったなど韓国の重要な近現代史の一部が生々しく描かれる。若いころから母に頼られ、無理難題を突きつけられ、そのたびに苦労してきた著者だが、母に対する溢れるような思いが感じられる。百年前の韓国南部の農漁村の様子も興味深かった。 最近の韓国の小説よりも安心して読めるというか、理解しやすいような気がした。2021/11/01
金糸雀
0
ブッカー賞の作家ハンガンさんのお父様の作品2020/09/10