内容説明
都心にギリギリ通勤圏内。他のコミュニテイから隔絶された山あいに国家が建設したのは、少子化対策の切り札となる集合住宅だった。「入居10年以内に子供を3人もうける」というミッションをクリアすべく入居したのは、4組の夫婦。やがて、お仕着せの“共同体”は少しずつ軋みはじめる―。奇抜な設定で、「共同保育」「家事労働」「労働格差」など韓国社会のホットで深刻な現実を描き出していると話題を呼んだ作品。
著者等紹介
クビョンモ[クビョンモ]
具竝模。慶煕大学国語国文学科卒業。2008年、長編小説『ウィザード・ベーカリー』でチャンビ青少年文学賞を受賞し、作家活動を始める。短編集に『それが私だけではないことを』(今日の作家賞、ファン・スンウォン新進文学賞受賞)など。リアリズム小説、SF、ファンタジーなど、ジャンルを超越した多彩な作品を発表し続けている
小山内園子[オサナイソノコ]
NHK報道局ディレクターを経て、延世大学などで韓国語を学ぶ(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
lily
96
5w1hの束縛世界の設定では不快、不満でしかないでしょうね。そんな極端なお話だから滝のような終わりのみえない愚痴を滑稽にしているのかな。始めから無理な条件なのはわかっているはずだけれど。夫婦喧嘩の原因のトップはお金のことでしょうね、そりゃ。お互いの人格、行動は無視できてもお金のことは無関心でいられないだろうからね。2021/02/07
pohcho
57
国が整備した夢未来実験共同住宅に入居した4組の家族の物語。何か事件が起こるとか明確な嫌がらせをされるということはないが、押しつけがましい善意や正しい言葉によるプレッシャーでどんどん息苦しくなっていく様子がとてもリアル。それに後半のセクハラ夫!じわじわくるやり口がとても巧妙でハラハラしながら読んだ。裏庭の美しく大きなテーブルは幸せの象徴のはずなのになんとも寒々しい・・。夫婦とは、家族とは。いろいろと考えさせられる内容だった。「「キム・ジヨン」が総論なら「四隣人」は各論」という韓国の言葉に納得。面白かった。2020/11/15
竹園和明
42
「夢未来実験共同住宅」。何ともイヤらしいネーミングだ。少子化問題を解決する為に国が用意した郊外型格安共同住宅。入居者は10年以内に3人の子供を産み、共同で育児するというルール。12戸の建屋に最初に入居した4家族の物語だ。だが各家庭にはそれぞれの事情があり、クロスする付き合いの中、徐々に軋轢が生まれ…。昔と違い今どきの共同生活は難しい。隣人との関係性や夫婦間の問題が閉塞した空間で際立ち、少しずつ歯車が狂って行く。その描写が自然で超リアル。また、愚かな国策を発する韓国を痛烈に皮肉っている気もした。面白かった!2022/02/11
あじ
38
十年以内に三人の子供を産むなり育てるなりしなければ、退去を命じられる国営の共同住宅。契約以前に夫婦生活の存続さえ危ぶまれる、田舎暮らしの密接なシガラミが描かれる。ドア一枚挟んだお隣(韓国)でも土足厳禁なのだ。飾らない実直な“日本語訳”が、逃げ場を塞ぐ感じで締め上げてくる。★3/5◆帯惹句は『82年生まれ、キム・ジヨン』チョ・ナムジュさんと『戦場のコックたち』深緑野分さん◆出版社直営で購入した書籍2020/01/24
星落秋風五丈原
38
韓国でも日本同様少子化の進む中、子供を三人産むことを条件に格安住宅を提供すると言う国家政策が施行され、郊外の住まいが提供される。 十二世帯の集合住宅に入居した四家族は、子供を共同保育したり、職場まで送ったりするなど、それぞれの交流を図る。情の深い韓国人同士ツーカーでうまくいくだろうと思っていたが、そこは日本人も変わらないようで、スープの冷めない距離が必要らしい。ましてや、先の言葉は嫁姑間で使われるが、今回は他人だ。2019/11/27