目次
きれいな地獄
瞳
鳥影
異形の秋
馬
五月
はばたく、まばたく
吃音の花
紫陽花にふれる
安珍さまへ〔ほか〕
著者等紹介
大森静佳[オオモリシズカ]
1989年、岡山市生まれ。高校時代に短歌と出会い、その後「京大短歌会」を経て「塔」短歌会所属。2010年、「硝子の駒」にて第56回角川短歌賞受賞。2013年に第一歌集『てのひらを燃やす』(角川書店)を刊行(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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masa
79
燃え盛る赤い書影に濡れたうた 静寂の闇 火照る言霊/人生初の歌集は、とても情熱的に熱く滴るようなデジャヴをくれた。まるで火と水の共演。僕は“おもい”を“ことば”に変換しようするとき、どんなに注意深く試みても、少しズレてしまう。だからいつも、伝えようとすると足すより削る作業になる。/行間に想いが奔る24時 書いては消した「 」を届けて/ならば31文字というのは、決して不足する縛りではないのだと思う。沈黙や空白や呼吸、間、こそが“こころ”なのか。/くちづけで こころはことばにならない嘘になるのと 声をふさいだ2019/05/04
カフカ
52
「わたくしが切り落としたいのは心 葡萄ひと粒ずつの闇嚥む」 「ひとびとの無数のまなこに押しあげられて花火がひらく」 「一度見たものはそののち何度でも見えるよ まぶたに柊の影」 実のところ意味を汲み取るのが難しい歌が多く、自分の浅学さを改めて実感したのでした…… また改めて再読して、もう少し理解できるようになりたい。2024/02/17
だいだい(橙)
25
買って良かった。大森さんの手法は、自分の日常を漫然と描くのではなく、他者に憑依するようにして他者の人生を一人称で生きてみせるものだった。ご主人のお父様が亡くなられた時のことを描いた章はあるが、それ以外は物語の主人公や、実在の人物になりきって詠んでいる。そのため短編小説集のようなドラマがあり、また一般に知られていない人も一部取り上げているので知る楽しみもある。そしてギリギリ、わかるかわからないかを読み手に問うこの表現力は素晴らしい。大森さん、ファンです。素敵です。2021/12/27
ちぇけら
20
はじめては夜桜のした きみじゃないひとと会う日の下着は透けり。公園のさるすべりからあらゆるひかりがうまれて、あなというあなになってわたしは、水のようにこえを洩らす。咥えた順に、薬指、薔薇の刺、氷柱。さいごに会ったきみは夜の海のにおいがたちこめていた亡骸だった。きみが買ってきた風鈴が鳴っていつまでもわたしは夏のまま、今日もしらないからだの熱をしる。ながれる涙も汗も、だけど、いつも雨の日の紫陽花のように凍ったまま。もう形のないきみに触れられたくてたまらなくて、なまえを呼んだ、唇は、永遠に湖だった。2019/05/07
双海(ふたみ)
12
第12回日本一行詩大賞受賞。「時間っていつも燃えてる だとしても火をねじ伏せてきみの裸身は」「欲望がフォルムを、フォルムが欲望を追いつめて手は輝きにけり」「そののちの長い月日の 狂うとき素足はひどく透きとおるけど」「全身できみを抱き寄せ夜だったきみが木ならばわたしだって木だ」2023/10/05