目次
きれいな地獄
瞳
鳥影
異形の秋
馬
五月
はばたく、まばたく
吃音の花
紫陽花にふれる
安珍さまへ〔ほか〕
著者等紹介
大森静佳[オオモリシズカ]
1989年、岡山市生まれ。高校時代に短歌と出会い、その後「京大短歌会」を経て「塔」短歌会所属。2010年、「硝子の駒」にて第56回角川短歌賞受賞。2013年に第一歌集『てのひらを燃やす』(角川書店)を刊行(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
283
書肆侃侃房の「現代歌人シリーズ」はこれで7冊目だが、私にとっての衝撃度は本書が一頭地を抜いている。著者、大森静佳の第2歌集。歌集のタイトルは、フランスの彫刻家カミーユ・クローデルから。ちなみにモネの最初の妻もカミーユだった。巻頭の1首「狂うのはいつも水際 蜻蛉来てオフィーリア来て秋ははなやぐ」。そして「釘いくつ抜いても壁に消えのこるイエスのてのひらに雨が降る」がこれに続く。最初からもう圧倒的な力で歌の世界に飲み込まれる。そして、歌集のいずれの歌も心に染み入って来るしらべを有している。2024/04/07
masa
80
燃え盛る赤い書影に濡れたうた 静寂の闇 火照る言霊/人生初の歌集は、とても情熱的に熱く滴るようなデジャヴをくれた。まるで火と水の共演。僕は“おもい”を“ことば”に変換しようするとき、どんなに注意深く試みても、少しズレてしまう。だからいつも、伝えようとすると足すより削る作業になる。/行間に想いが奔る24時 書いては消した「 」を届けて/ならば31文字というのは、決して不足する縛りではないのだと思う。沈黙や空白や呼吸、間、こそが“こころ”なのか。/くちづけで こころはことばにならない嘘になるのと 声をふさいだ2019/05/04
カフカ
54
「わたくしが切り落としたいのは心 葡萄ひと粒ずつの闇嚥む」 「ひとびとの無数のまなこに押しあげられて花火がひらく」 「一度見たものはそののち何度でも見えるよ まぶたに柊の影」 実のところ意味を汲み取るのが難しい歌が多く、自分の浅学さを改めて実感したのでした…… また改めて再読して、もう少し理解できるようになりたい。2024/02/17
毒兎真暗ミサ【副長】
32
開幕の章「きれいな地獄」から始まり。そこからもう、体の皮膚の裏側から凝視されている錯覚に陥る。咎を罪として、同じ堕ちるなら綺麗なほうへ……と絡まる誘惑。この歌集は棺桶のように口をひらき、吐息を閉じ込め。そして赤い薔薇群と成り咲き誇るのだ。言葉は花びらのように。露に濡れて、頬を濡らす血実の結晶。ゆく宛てのない恋慕を、弔うために神を崇める。それは、贖罪かしら。懺悔かしら。それとも。それでも抱いて、と言うのかしら。2024/05/16
だいだい(橙)
25
買って良かった。大森さんの手法は、自分の日常を漫然と描くのではなく、他者に憑依するようにして他者の人生を一人称で生きてみせるものだった。ご主人のお父様が亡くなられた時のことを描いた章はあるが、それ以外は物語の主人公や、実在の人物になりきって詠んでいる。そのため短編小説集のようなドラマがあり、また一般に知られていない人も一部取り上げているので知る楽しみもある。そしてギリギリ、わかるかわからないかを読み手に問うこの表現力は素晴らしい。大森さん、ファンです。素敵です。2021/12/27