内容説明
一瞬の誤った選択によってずるずると破滅へと進む男ヒョンスに死刑が言い渡される。娘を死に追いやった男ヒョンスへの復讐に燃える冷徹な男ヨンジェは、七年の後、死刑が執行されたその日から、ヒョンスの息子ソウォンへ魔の手を伸ばす。セリョン湖と灯台村の美しい風景を背景に息も切らせぬ執拗な心理劇と容赦ない暴力の応酬。読者の不安が頂点に達したとき、物語は衝撃のクライマックスへ。
著者等紹介
チョンユジョン[チョンユジョン]
本名、丁柚井。韓国全羅南道咸平生まれ。『私の人生のスプリングキャンプ』で2007年第1回世界青少年文学賞、『私の心臓を撃て』で2009年第5回世界文学賞を受賞
カンバンファ[カンバンファ]
本名、姜芳華。岡山県倉敷市生まれ。岡山商科大学法経学部法律学科、韓国梨華女子大学通訳翻訳大学院卒、高麗大学文芸創作科博士課程修了。梨華女子大学通訳翻訳大学院、漢陽女子大学日本語通翻訳科、韓国文学翻訳院翻訳アカデミー日本語科講師。韓国文学翻訳院翻訳新人賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ナミのママ
44
韓国書籍を扱っている書店にて見つけた「韓国ミステリー」。映像化され他国にも翻訳されているヒット作とのこと。感想を一言でいえば北欧ミステリーに似た感じでしょうか、重苦しい場面が500ページ以上続きます。「事件」の真相は最後までわからずでミステリー部分は面白かったです。登場人物と事件地区の地図が冒頭に載っていて何度も見開きました。派手さは感じられないものの「悪」を見続ける作家さんとのこと、中村文則さんの作品の読後感にも似ているように思います。ひさびさにじっくり向き合った一冊という感じで、私には面白かったです。2018/04/14
星落秋風五丈原
34
韓国お得意の時系列入れ替えサスペンス。娘を殺され復讐に燃える父を演じたのはチャン・ドンゴンだとか。一見いい人そうに見えて冷えた情熱を秘めていそうな役をどんな風に演じたのか。いやぁぜひ見てみたい。この蛇のような執念深さ。韓国お馴染みの、と言ってしまっては厭なのだが女性や弱き者に対する容赦ない暴力が痛い。2018/03/01
かんやん
28
七年前の夜に妻を殺し、ダムの水門を開き大勢を殺したとされ、死刑宣告を受けた元プロ野球選手。その息子の少年は、殺人犯の息子として汚名を着せられ学校・住所を転々とせざるを得なかった。父は本当に犯人だったのだろうか……。大変な力作で最初の三分の一は夢中になるけれど、次は中弛みし、残念ながら、クライマックスのアクションでは心が完全に離れていた。小さくないプロット上の欠陥が幾つもあるのに、誰も指摘しないのは、一々面倒な上に、読んでない人には通じないからだろう。それにしても、月並みなアクション映画みたいではないか。2021/07/12
ケロリーヌ@ベルばら同盟
20
初めて読む、韓国のミステリー。あまりに重く、非情なテーマに、何度も息苦しさを覚えて本を閉じてしまった。けれど、暫く時間を置くと、またこの本の前に戻る。表紙画の、淡いブルーの中、眼を閉じ、ふんわりと笑みを浮かべる少女。この子の身に起きた事実と真実の間の何かを知らないでは済まされなくて。心弱さから、事故を起こし深みに嵌って行く男とその家族、被害者。人間の怯懦、残虐性、支配欲そして愛情が、渦巻く奔流のように力強い筆致で描き出される。圧巻でした。2018/05/29
松本直哉
19
破局的な決壊と洪水、そこから始まる七年越しの怨恨と復讐、拘束からの命懸けの脱出、会えない父子の間に通う感情など、よくできた韓国映画みたいだ(実際に映画になっているようだが未見)。無実の息子に向けられる男の偏執的な悪意は、自分の思い通りの定位置に全てが収まっていないと納得せず、片っ端から矯正せずにいられない男の性格によるのだろう。彼による動物虐待をかろうじて生き延びた子猫アニーが亡き少女の生まれ変わりかのようで、窮地に陥った少年の体を温めて、生きている少年と死んだ少女が幻の中で遊ぶ場面が印象的。2025/05/31