目次
1(切手;港の皺 ほか)
2(ターミナル;きんか銀貨 ほか)
3(夜の底;蝶)
4(未生のむすめ;水の耳穴 ほか)
5 桔梗平にて(妹背)
著者等紹介
野口あや子[ノグチアヤコ]
1987年岐阜県生まれ。「未来」短歌会会員。2006年、「カシスドロップ」にて第49回短歌研究新人賞を受賞。2009年、第一歌集『くびすじの欠片』(短歌研究社)を刊行。同歌集にて現代歌人協会賞を受賞。作歌ほか他ジャンルとの朗読活動も行っている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ヴェネツィア
272
ドール衣装に包まれた歌人本人の写真(三品鐘・撮影)が随所に散りばめられているせいか、歌群までがナルシスティックな装いを帯びているかのようだ。いずれにしても、歌の多くは多かれ少なかれセクシュアリティを纏っている。もしくは身体性を伴っている。雅語や特殊な漢語は用いられることはなく、平易な言葉で歌われている。ただ、時として上の句の表現と乖離したかのような表現が下の句に現れ、そこに独特の表象を生み出すのも、この歌人の歌の特徴の一つかと思う。例えば「くせのある毛髪にワックス伸ばしあなたはみんなあかのたにんだ」。2024/04/03
たまきら
38
読み友さんの感想を読んで。表紙の写真が素敵だったのでダンサーなのかな?と勝手に想像して手に取ったら、ちょっとナルシストっぽい写真でがっかり。ただ、生きる日々にどこか息苦しさを感じている生身の女性の感覚がよく描写されている言葉には私小説を読んでいるような、親密な世界観に誘い込まれたような感覚を覚えました。現代歌人シリーズ、読んでみようかな…。2024/04/10
ちぇけら
24
野球場のみどりのベンチで交われりきみの誠意はぬかるんだまま。形状記憶の両腕が、まひるまに抱きあったおとこを求めている、終電のまえにかえってきたわたしの喉がこくんと鳴る。悪意にひたったワンピースをぬいで、ピースに火をともす。視界が滲んで滲んで煙のせいだよって、だれにいうでもなく。それからセミ・ダブルのうえで、濡れたからだをゆっくりとひらく。あなたのことなんて、考えないってきめたのに、指先があなたの熱をおぼえている。とおくを救急車がすぎていく。レースのカーテンをうすくめくって、よくぼうがさびしいよ。2019/09/12
ぐっちー
11
ぱっと見て、心惹かれて手にした歌集。この方の身体表現というか、冷たく乾いた感触を表現する言語能力は絶品だと思った。他の作品も読みたい。2020/11/24
双海(ふたみ)
8
写真・三品鐘、衣装・ Lhiannan:Shee、短歌・野口あや子のコラボレーション歌集。「なんてきれい 蓮(はちす) 半身を横たえるときは髪からたわみはじめて」「押せばへこむあなたの肌を透かせつつワイシャツの白まぶしかりけり」2023/10/05