出版社内容情報
【泳ぐとき、人は美しいほど一人きりだ。】
深く潜りゆくシャープな歌と、誰かを求めて浮上する歌に
こころと呼吸が奪われてゆく。
(光森裕樹)
<自選短歌五首>
爪に残る木炭ばかり気になって完成しない風の横顔
肋骨のケージで飼っている月が膨らんでゆく しゅはり、しゅはりと
冬生まれだから、で指のつめたさを君は語りぬまひるまの坂
流星のような一瞬 送信を終えて止まった画面見ている
雨 きっと忘れてしまうあの木々にさくらという名があることもまた
杉谷 麻衣[スギタニ マイ]
1980年11月1日生まれ。
京都府京都市出身。
大阪府大阪市在住。
Twitter : @kazanagistreet
目次
空の絵を
夏の鋭角
ロド
色彩の散弾
44 minutes
海の音色・雨の音いろ
著者等紹介
杉谷麻衣[スギタニマイ]
1980年11月1日生まれ。京都府京都市出身(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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kaizen@名古屋de朝活読書会
24
杉谷麻衣 短歌 ざらつきがなくて幼い波の音みなとと呼ばれる校区の海は 保健室の南のまどからだけ見える三時間目の海が好きです 制服の下に君との夏かくし地理の時間は潮風を聴く 晩秋のプールの水の色をした廊下に浮いている下足あと さよならはシンメトリーな水彩画せいいっぱいの卒業をする 海近き無人の駅に降り立てば錆びたにおいがしそうな夏日 p.11 黒板に班分け除算の…(あまり)1わりきれなさを書く場所がない 返歌 白板に班分け三人づつだから先生二人入れ割り切ろう 2016/12/14
スミス市松
13
十代の爽やかな息づかいを感じさせる歌(制服の下に君との夏かくし地理の時間は潮風を聴く/みずうみを塗っていた筆あらうときしずかに透けてゆくきみの声)に始まり、京都の幾つもの橋上で詠んだ歌(背の高きひとから秋になることをふいに言われぬ晩暉の橋に/なでしこよ回ることなきかざぐるま遥かなものはおまえとおもう)や、上京して東京の街並みに違和感を覚えている歌(通り雨 きみは生き抜くようにしてスクランブルを斜めにわたる)など、歌人が日々を泳ぐようにして過ごしてきたその軌跡を読者はこの歌集から確かに感じ取ることができる。2017/03/19
たいちーらぶ
2
一首目の『空の絵を描けといわれて窓という窓を砕いて額縁にする』からドキッとさせてくれた。破壊的であるが想像力豊かで面白い。『図書室の前にたたんだ車椅子 みえないきみを見つけてしまう』ロドと名付けた車椅子の歌は、どれも切なさと可笑しみがある。2022/02/06
林檎
2
とてもきれいだった。2019/07/11
青色
2
青い印象がしてとても綺麗だった。出てくるモチーフとか言葉とかが好みだったのでもっとこの人の歌をよんでみたい。2017/11/12