目次
ひとりひとり
あかるい未来の話
くちびるで聴く心臓の音
虹の回診
季節外れの夏の香水
ひまわりを抱く
こどもは勝手におおきくならない
カルピスが甘すぎる
風通し
寒雷の夜に爪を〔ほか〕
著者等紹介
田丸まひる[タマルマヒル]
1983年、徳島県生まれ。2004年、第一歌集『晴れのち神様』(歌葉)上梓。2011年、未来短歌会入会。2012年、未来賞受賞。2014年より「七曜」同人。短歌ユニット「ぺんぎんぱんつ」としても活動中(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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masa@レビューお休み中
87
痛い、痛くて、痛すぎる。けれども、苦痛はともすると快楽にとって変わる。痛みは慈しみに、悲鳴は悦楽に、絶望は恍惚に…。相対するものは相容れないものでは決してない。どこかで交差する点があり、そこを通ると真逆の方向に行けるのだと思う。田丸まひるの短歌は、そんな秘する快楽をもっているように感じるのだ。決してこの渦中に僕はいない。それなのに、まるで経験したかのように、渦中で何かを感じたかのようにリアルに言葉が身体に染みていく。人はどこまでも自由だ。自由だからこそ、言葉の中ではもっと奔放であっていいのかもしれない。2016/08/24
kaizen@名古屋de朝活読書会
43
#田丸まひる #短歌 雨、彼の臓器たっぷり潤ませてあの子のもとへ届けてほしい 死ぬときに食べたいもののことばかり話して海にたどりつけない ひとりではないふたりでもないことを終わらない雨の人には教える 桃色の炭酸水を頭からかぶって死んだような初恋 小糠雨のようなセックスずっとずっとずっときれいなからだでいたい やわらかな炎に水をこぼすときあなたの淡い悲鳴ちがうの 返歌 透明な炭酸泉に入る前かけ湯を桶で頭にかぶる2016/08/13
ちぇけら
26
さっきのつづきがしたいとゆびさきでなぞるひかりのごと擦過傷。嘘はかならずわかると言ったのはこのひとか、べつのひとか定かではないが、もうそのひとでは燃えないし潤まない。指先の塩気とか、舌の裏側の感触とか、踝のまるみとか、そんな感覚で選ぶのは間違いだと思わないけれど正しいとも思わない。いま覚えているのは、そのひとの硬い背中だけだから。たださびしいよ、わたしが剥がされていくみたいで。たまにどうにもならなくなって震えがとまらなくて、だからやっと、割れているんだと気づいた。わたしのなかで硝子が。キラキラとひかって。2019/11/12
タピオカ
25
大学生に数年前に勧められた短歌集。激しさに揺さぶられ、今の自分と違う世界に連れて行かれた。思春期の子どもと向き合う精神科医ならではの歌もささった。/桃色の炭酸水を頭からかぶって死んだような初恋/2020/05/04
太田青磁
21
こなぐすり飲むときだけは少年の時代の顔を見せるのですね・ドロップス夕方色の一粒を何も言えない舌から舌へ・どこまでが粘膜)足を閉じなさい(まずは目蓋をはずしてあげる・どの夜の音色を出せばほんとうにほんとうにさびしいってわかるの・まひるまの天井の影うすくなり濃くなりきらきらひかる粘液・過呼吸の恋を何度も繰り返ししびれるようにでも生きている・明日こそ死ぬ約束をいつまでも更新させて生き延びたいね・点描の雨わたしより丁寧にわたしの髪を梳くひとがいる・愛してるどんな明日でも生き残るために硝子の弾丸(ボレット)を撃つ2015/05/30