内容説明
2008年以来、11年の刑で服役中のノーベル平和賞作家で詩人の劉暁波。日本で初めての詩集刊行。
目次
1 蟻が泣いている(一通の手紙で十分だ;神は掌中に ほか)
2 肖像(忘れることのできない荘子;太史公の遺志 ほか)
3 世界を深く刺すナイフ(追悼王小波;お爺さんへ ほか)
4 ホコリと一緒に僕を待つ(人形たちに訴える;貪欲の囚人 ほか)
5 ひとつの品詞から始まった驚愕(扉;もしもうすこし近づけたら ほか)
著者等紹介
劉暁波[リュウシャオボ]
1955年12月28日吉林省長春市生まれ。1969年から1973年まで両親が文化大革命で下放され、内モンゴルに住む。1977年吉林大学中文系に入学、1982年、文学学士の学位を取得。1984年北京師範中文系修士課程修了、文学修士の位学を取得、教職に就く。1988年、同大学にて文学博士の学位を取得。2008年12月8日「08憲章」起草の中心人物とされ、「国家政権転覆扇動罪」で2010年2月9日二審判決、刑が確定した。2010年10月8日ノーベル平和賞受賞決定
田島安江[タジマヤスエ]
1945年大分県生まれ。書肆侃侃房代表(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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新田新一
31
作者はノーベル平和賞の受賞者です。ここに収められている詩は、国家政権転覆扇動罪で逮捕され服役中に書かれたもの。詩の大半に妻である霞氏への深い愛情が表現されています。清らかで一途な思いであり、読んでいると共感せずにはいられません。僕は一生君の囚われ人で良い、といった表現を読むと、これこそが真の愛だと思われてきます。有名な作家や哲学者に言及した詩もあり、興味深く読めました。私はブロンテ姉妹を崇拝しているので、エミリーの短くて激しい生涯を描いた詩には心を打たれました。獄中で亡くなった作者のご冥福をお祈りします。2025/02/04
Y2K☮
31
先月&今月のポエム。2010年ノーベル平和賞受賞。投獄歴4回。昨年亡くなっていたのか。神への懐疑、唯物史観、現実への諦観、そしてカフカやプラトンへの冷徹な眼差しに見入る。でも本書の肝はそれら全てと同志でもある妻への深い慈しみが天秤の左右で釣り合っている点だ。離れている時間が長過ぎた事を逆手に取り、目を閉じればいつでも会えて、しかも何をしているか直観できる様になったのでは。彼女の存在がきっと知性に走りがちな著者をずいぶん人間らしくしたんだろう。巡り会えた半身。守るべき存在。でも攻撃は最大の防御。戦わなきゃ。2018/10/03
マリリン
22
遡るような構成になっているが、作者が30代半ばから40代半ばに書いた詩は、暖かくも鋭い言葉で綴られている。時代背景を感じる。「Ⅲ世界を深く刺すナイフ」「Ⅱ肖像」は作者の奥行の深さと激しさを感じた。その中でも妻への愛は穏やかで優しい。全く知らない詩人だったが、良い作品だった。 ...畜生 歴史を黙らせろ 沈黙にはもう少し人間性と尊厳があるべきだ (1996.12.30『太史公の意思-劉霞へ』より)2018/11/06
チェアー
17
人として普通に生きて、人を愛したいと思っているのに、そう思うことが罪とされ、牢獄にとらわれる。その状況のなかで、詩がうまれる。煙草を吸う妻を愛しいと思いながら、抱くこともできず、言葉を贈ってもそれは届いているのかと心配になる。彼を人権問題の象徴として捉える前に、作品を読んでおきたいと思う。妻に5分間で自分を称える言葉を書いて、と言われる詩が好き。2017/08/22
かもめ通信
15
劉暁波(リウ・シャオボー)氏の訃報に接し、本棚から引っ張り出してきて再読した。2017/07/15