出版社内容情報
自然のポテンシャルを活かす照明・暖房・冷房・ 換気などの建築環境システムをエクセルギー概念を基礎に据えて研究する、東京都市大学名誉教授・宿谷昌則。建築環境空間におけるヒトの振る舞いと建築環境システムの関係について生物学の視点を取り入れた研究も行ない、自然のポテンシャルを活かせる住まい方とは何かを明らかにしようとする。数式は一切使わず「難しいことをやさしく、やさしいことを深く、深いことを面白く、面白いことをまじめに」書くことを方針に、建築環境を巡る様々な自然現象をエクセルギー概念を駆使して読み解き、あってしかるべき技術を浮き彫りにする。
内容説明
本書で著者は建築環境学の視点から熱力学・人間生物学の領域に踏み入る。例えば、ニワトリ受精卵の孵化プロセスに建築のパッシブ型技術とアクティブ型技術の原形を見る。水飲み鳥の玩具を用いて、地球環境システムの動的平衡の仕組みを示す。また重力と太陽光の振る舞いに応じた体内時計の同調性から明るさ一定不変の室内照明に警鐘を鳴らす。様々な光子の重さの違いを読者に描像させてから、室内側・室外側に設けた日除けの効果の違いがなぜ起こるのかについて教示する。さらに読者は炎天下、舗装道路や建築外壁面が40℃を超える温度になるのになぜ植物の葉面がそうならないかを理解することで、生命系を含めた地球環境システムの成り立ちの理解を深めていく。著者は述べる。「外なる自然と内なる自然が創造した様々な仕組みを賢く模倣する。それが人間の創出すべき技術の基本でしょう」と。建築環境学の視点からその礎となるべき環境物理学を構想するエクセルギー研究第一人者による“人・建築・地球”をめぐる40講。
目次
第0章 改めて何を問い、学ぶか?
第1章 環境と情報をどう読むか?
第2章 技術と自然をどう読むか?
第3章 つながる自然を読む
第4章 改めて知る光と熱の振る舞い
第5章 エネルギー・エントロピー・エクセルギー
第6章 拡散・凝集の振る舞いを読む
第7章 人体の振る舞いとエクセルギー
第8章 流れ・循環を成す自然と技術