内容説明
本書は核物質の大学院1年目のコースの教科書としておよび原子力発電所用部材の設計および性能面での様相に係わる技術者達の参考書として、その両方に対処出来るように設計している。本書はカリフォルニア大学、バークレー校、原子力工学部の大学院での講義が基となっている。原子力工学の院生達は様々な学科の卒業生から成るものの、多くは本書で簡単に取り扱い、かつ取り扱う応用の大部分を占める基礎的な物理学と化学のバクグランドを有している。この理由から最初の8章は統計熱力学、結晶学、化学熱力学、金属物理学の特定分野のレビューに割り当てている。第9章から第16章で酸化物燃料の性質と照射挙動を扱う。第17章から第20章は被覆材に対する同様の問題を扱う。第21章は前章までに紹介した物質の挙動解析での燃料要素全体に対する性能計算を示す。…このアプローチは記述的よりむしろ解析的である。燃料要素の幾つかの様相の性能模型と読者がよく知る単純で基本的物理原理間での関係を非常に明確にし単純にするのがその意図である。この哲理は単純表示に比べ多くの燃料要素性能解析を導くための開始点で構築される沢山の標準式、古典式を意味している。可能な限りこの様相を本書は首尾一貫しかつ包括的であるよう意図した、その長さがこのアプローチへの書き取りの大部分を成している。究極の目的は一緒に入れられた金属とセラミック中で起きている原子炉燃料ピンの複雑な照射挙動を生み出す物理学的過程の理解を伝えることである。…学生達への手助けとして各章の末に問題を提供している。
目次
統計熱力学
固体の熱物性
結晶構造
固体の凝集エネルギー
化学平衡
固体の点欠陥
固体の拡散
転位と粒界
UO2の状態方程式
燃料要素の熱挙動
燃料化学
酸化物燃料要素内の固体核分裂生成物挙動
分裂ガスに依るスエリング
ポア泳動と燃料再組織化の運動論
分裂ガス放出
UO2の機械的性質
照射損傷
金属の照射効果:硬化、脆化、破壊
金属の照射効果:気泡スエリング、照射クリープ
ナトリウムとステンレス鋼の相互作用
燃料要素と集合体の機械的挙動モデル
弾性理論
著者等紹介
Olander,Donald R.[OLANDER,DONALD R.] [Olander,Donald R.]
カリフォルニア大学名誉教授。1953年に化学学士号を、1954年化学工学修士号をコロンビア大学から授与され、マサチューセッツ工科大学(MIT)で溶媒抽出法を用いる核燃料の再処理学位論文でPhD(化学工学)を取得した。1958年にカリフォルニア大学バークレー校教員となり1961年から引退する2008年までバークレー校原子力工学部に在籍した。彼の研究は核燃料の化学的側面に傾注されてきた。彼は2000年の工学国立アカデミー会員に選出され、アメリカ原子力学会のフェローであった。2021年4月死去
今野廣一[コンノコウイチ]
1950年生まれ。1974年北海道大学大学院工学研究科修士課程(金属)修了。動力炉・核燃料開発事業団大洗工学センター・高速増殖炉開発本部で燃料・炉心材料物性、事故模擬照射試験、核物質会計、制御棒材料、輸送容器開発、核燃料サイクル開発機構プルトニウム燃料センター・大洗工学センターで保障措置、輸送容器許認可、燃料物性研究。1987年~1990年核物質管理センター情報管理部で誤差分散伝播・測定誤差評価プログラム開発と統計解析。2002年~2005年宇宙開発事業団安全信頼性管理部で非破壊検査装置開発・工場監督。2008年~2016年日本原燃(株)濃縮事業部で安全管理・核燃料取扱主任者。工学博士(原子力):核燃料物性/統計解析/保障措置(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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