内容説明
バブル景気直前の昭和の終わり、京都市は有名寺院の拝観者に課税する古都税の実施を試みた。清水寺をはじめとする対象寺院は京都仏教会に結集し、憲法の信教自由規定を根拠に、拝観者に対して門を閉すなどの古都税反対運動を展開した。それから約三〇年が経過した今、関係者の貴重な証言を集めて古都税問題を総括する。
目次
第1部 古都税問題・景観問題の経緯(古都税問題;景観問題)
第2部 関係者インタビュー(奥野康夫氏(元京都市助役)
高木壽一氏(元京都市副市長)
桝本頼兼氏(前京都市長)
瀬川恒彦氏(元朝日新聞記者)
西山正彦氏(旧「三協西山」元社長)
田中博武氏(清水寺門前会会長)
鵜飼泉道師(元京都仏教会事務局長・極楽寺住職)
五十嵐隆明師(総本山永観堂禅林寺第八八世法王)
大西真興師(京都仏教会理事・清水寺執事長)
安井攸爾師(京都仏教会理事・蓮華寺住職)
佐分宗順師(京都仏教会常務理事・臨済宗相国寺派宗務総長)
有馬頼底師(京都仏教会理事長・臨済宗相国寺派管長))
第3部 論考(拝観行為の宗教的意義;古都税問題の税法学的考察;古都税反対運動を再考する―歪んだ「物語」からの解放と運動の再評価に向けて)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アメヲトコ
3
昭和末の京都をゆるがせた、寺院の拝観料を50円上乗せして税金として徴収することをめぐって京都市と寺院が激しく対立した、いわゆる古都税問題。発生から約30年がたった現在、その問題とは何だったのかを総括する一冊です。内容は三部構成で、対立の経緯、当時の関係者へのインタビュー、論考から成っていて、目配りが効いています。京都仏教会の編集という点を差し引いても、当時の寺院側の主張には一定の理があったように感じましたが、一方で信教の自由を標榜しながら拝観の全面締め出しという戦術に出たことには若干モヤモヤもします。2017/04/15