内容説明
ヒトラーの秘密命令書により、価値のない命として、数十万人の障害児者を殺戮した安楽死計画。「津久井やまゆり園」での障害者殺傷事件の本質を考え、ナチスの安楽死計画の背後にある優生思想、排外主義への闘いと誰も排除しない社会の構築に挑む。
目次
第1章 子どもたちの殺害計画
第2章 T4安楽死計画
第3章 人種衛生学、ナチスの医師たち、「断種法」
第4章 加害者と共犯者
第5章 残虐行為のあとで
第6章 覚えておかねばならないこと
著者等紹介
エヴァンス,スザンヌ・E.[エヴァンス,スザンヌE.] [Evans,Suzanne E.]
作家、ジャーナリスト、弁護士。米国カリフォルニア州ウィッティア生まれ。歴史学博士(カリフォルニア大学バークレー校)。『ロサンゼルス・ビジネス・ジャーナル』記者を経て現職
黒田学[クロダマナブ]
立命館大学産業社会学部教授。障害児福祉、地域福祉。1963年生まれ
清水貞夫[シミズサダオ]
宮城教育大学名誉教授。障害児教育学。1940年生まれ(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ゆう。
33
絶対に忘れてはならない歴史はある。過去の過ちを繰り返さないために。またその時代に生きた人々の存在を忘れないために。ナチスの蛮行は許されない。多くの加害者はなかったことにしようとしている。この歴史の教訓は、果たして日本で生かされているのだろうか。見たくない歴史の事実から目をそらすことで得るものはあるのだろうか。2019/10/09
Aby
3
ナチス・ドイツの障害者安楽死計画と断種について.著者はジャーナリスト(研究者ではない).研究書としては詰めが甘い感じだが,関係者の手紙や証言が多く載せられている.◆人名の表記は,ドイツ現代史の研究者にチェックを入れてもらった方がよかったかなー 2022/01/17
マイケル
3
ナチス・ドイツの「T4安楽死計画」が、ドイツの精神科医たちの誤った仮説やとんでもない信念によって進められて行ったことが書かれています。ドイツでは障害者の安楽死だけでなく、スイスを参考にして障害者の強制断種も実施していたそうです。意外なことに、1928年のスイスの方が、1933年のドイツよりも先です。なお、本書は2016年に発生した「相模原障害者施設殺傷事件」がきっかけで翻訳することになったとのこと。優生思想というのは決して過去の事ではないと思います。本書でコスト至上主義の恐ろしさを感じて欲しいと思います。2018/02/21
paxomnibus
1
強制収容所というとユダヤ人をガス室で大量死させたイメージが大きいが、実はそれ以前にナチスの行った障害者や精神病者の虐殺や断種が母体となっていた。「生産性がない」という理由で収容所に集められ、政府の指導の下、親の許可もないままに殺されていった障害児達。薬を使うのがもったいないと計画的に餓死に追いやられた者も多い。「生産性がない者を効率的かつ安上がりに殺す」ための技術は第二次大戦の前から研究され、培われたものだった。ダイナマイトは死体が飛び散って掃除が大変だからガスを選び、シャワーと言えば自分から赴くからと。2020/10/04
札幌近現代史研究所(者。自称)
1
ホロコーストといえばイコールでユダヤ人(のみ)アウシュヴィッツ(のみ)と結び付けられがちだと思うがそれに先立って開始され、主にキリスト教関連から批判が出て公式中止命令が出たあとも14f13作戦、そして「野生化した安楽死作戦」として一貫して続けられた障がい者への強制断種、大量殺戮の側面に描写の重点を当てた本。関連書籍から知っていた(小俣和一郎氏の著書など)もあるが、未だに(本書刊行時2017年)ドイツ政府は障がい者の生存者に補償をしておらずそれは世界的にも社会的包摂に反するとの論旨も貫かれ一読に値する。2020/07/13