内容説明
近世中頃から近代にかけて、薩摩藩領の農民は重い貢租と商品作物の作付強制と役人の経費負担などの収奪を受けて、「生存はあったが、生活はなかった」と言われてきた。しかし、現実には農民は近世に遡るハレの日の諸行事を継承するなど生きる楽しみに彩られた「生活」を営んでいた。このかけ離れた状況を矛盾なく結び合わせる鍵は、農民がサツマイモを主食材に組み込んだことであるとの仮説を提起し、サツマイモ作の普及と農民の暮らしとの関わりを、土地利用の復原作業や営農技術書・紀行文の記述を拾って検証した、視野の拡大を促す書。
目次
第1部 薩摩藩領の耕作技術と農民の暮らし研究の展望(問題の所在;「『列朝制度』巻之四 農業」の耕作技術;作業仮説;近世後半の耕作技術と農民の暮らし;近代の耕作技術と農民の暮らし;田畑の所在地を復原する;研究の展望)
第2部 「『列朝制度』巻之四 農業」の翻刻・現代語訳・解題(翻刻・現代語訳;解題)