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内容説明
サリンジャーが遺した最高の9つの物語。35年ぶりの新訳。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
104
訳者を変えて再読。読みやすいが、野崎孝氏による「バナナフィッシュにうってつけの日」や「コネチカットのひょこひょこおじさん」などが印象深いせいか、題名がしっくり、来ない・・・。「佐藤友哉氏の『ナイン・ストーリーズ』のネタはここか~」という点でも楽しめました。「バナナフィッシュ日和」の電話してくるお母様、うざいわ~。そしてバナナフィッシュの意味、「ディンギーで」は米国のユダヤ人差別の根強さと「テディ」のまだ、10歳なのに倦み疲れたようなテディの家庭事情が虚しすぎてラストでストンと落ちてしまったのが色々と辛い2017/09/30
アキ
99
9つの短編から成るサリンジャーのナイン・ストーリーズ。「バナナフィッシュ日和」「コネチカットのアンクル・ウィギリー」「エスキモーとの戦争前夜」「笑い男」「ディンギーで」「エズメに――愛と悲惨をこめて」「可憐なる口もと 緑なる君が瞳」「ド・ドーミエ=スミスの青の時代」「テディ」。9つの物語のうち特に最初と最後の短編で「死」の影を強烈に感じる。訳者あとがきも原著者の要請で載らず。「謎解きサリンジャー」での「バナナフィッシュ日和」のラストシーン「自殺」したのは誰なのかという問いも、指摘されなければ気が付かない。2021/12/14
ずっきん
81
野崎訳がこびりついている。初読当時は、戦争だの暗喩だのはまったく解さず。にもかかわらず『バナナフィッシュ』と『テディ』がなんだか衝撃で、体中が悲哀や怒りで膨れ上がってしまい、居ても立っても居られずに『自分の誕生日パーティーで家族全員を恋人もろともショットガンで撃ち殺し、自殺する』という、生まれて初めての創作という駄文を厨二の激情全開で書き散らした黒歴史を『青の時代』とリンクさせ、微笑ましく読む熟年かな。大人になって読むサリンジャーも好き。柴田さんの新訳も好き。2021/04/23
踊る猫
50
実に血腥い作品集だ。傑作選、というのとも違う。纏まりという点で言えば「バナナフィッシュ日和」「テディ」のようなスケッチや他愛もないミニマリズム、「笑い男」の病的な作り話ぶり、「エズメに捧ぐ」の退廃した世界などを概観すれば分かるように支離滅裂で、「九つの話」と表現するしかないことに気づかされる。この支離滅裂さがしかしサリンジャーの味なのだろう。基本的には大人と子ども、男と女の対比が「ストーリー」を浮き立たせており、何処に視点を置くかによって「恋愛小説」「シュール」「戦争文学」と違った味わいを抽出し得る。凄い2019/02/03
踊る猫
42
ぼくたちを見舞う「死」や、ないしはなんらかの「終わり(それは若さ・青春の終わりをも意味するだろう)」が控えているからこそ生が尊い、という逆説的な事実を照射しているのかなと思う。それをひと口で言えば「禅」的もしくは「もののあはれ」ということになるだろうし、サリンジャーの戦争体験も影を落としていよう。だが、そうした抹香臭さや血腥さが「裏」テーマなのかもしれないが「表」にあるのはサリンジャーの繊細な感受性がとらえたこの世を生きる人たちの生のありようかとも思う。活き活きした会話と哲学的な思考といった要素に息を呑む2025/03/03