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内容説明
前代未聞の高額で落札された一枚の名画。しかしその除幕式で絵が披露された瞬間、作者である老画家の表情が一変する。数日後、老画家が息子に明かしたのは驚愕の事実だった…すべての読者の魂を揺さぶる、天成の物語作家の長編小説。
著者等紹介
パハーレス,サンティアーゴ[パハーレス,サンティアーゴ][Pajares,Santiago]
1979年、スペイン、マドリッド生まれ。2004年、25歳の時に書いた小説「螺旋」(木村榮一訳、ヴィレッジブックス)で作家としてデビュー
木村榮一[キムラエイイチ]
1943年、大阪市生まれ。神戸市外国語大学名誉教授。現代ラテンアメリカ文学の精力的な翻訳・紹介で知られる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
74
天才の画家、エルネストは絵画を美術館に寄贈してすぐに「あの絵は不完全だから描き直したい」と言い始めた。無論、美術館からけんもほろろに断られ、息子、フアンも関わらざるを得ない絵画奪還計画が始まった。天才であるが故に孤独で妻だけが社会との接点だったエルネストと秀才であるが故に画家への道を選ばなかったフアンの不器用な愛情にフアンの妻が要らん事するのがうっとおしい。一方で贋作者となったベニートがエルネストへ告げた贋作者になった訳が痛々しいが、その告白によって二人は師弟・父子関係から対等な友人同士になれたのだろう。2016/06/01
GaGa
60
初めて読む作者。これが心に沁みるいい小説だった。翻訳のうまさもあるのだろうが、非常に読みやすく、物語は静かにそれで熱く進行していく。芸術というテーマを持ち込んだホームドラマ。父と子、夫と妻、父と友、そして本物と贋物、それらのテーマがタイトル通りキャンバスに上手く描かれている。デビュー作の「螺旋」もいつか読んでみようと思う。2012/01/08
miyu
36
ラストが解りづらいとかすり替えの過程が見えにくいとか色々あるが、それは取るに足らないこと。偉大な画家(芸術家)の真摯な姿や執着、そんな人を家族に持たざるを得なかった息子の心の葛藤に惹き込まれた。少し変わった父親とそれに影響を受ける息子の話が好きなので、これも最後まで胸熱で読んだ。心惹かれるのは父親エルネスト、そして美術品窃盗のビクトル。この二人、言うことがいちいち格好良すぎる。贋作家のべニートも素敵だ。どうも自分は長く生きてきた人の表に出ない裏側の人生に思いを馳せる質らしい。読了後のこの清々しさときたら。2015/03/08
りつこ
27
好き好き大好き!「螺旋」も大好きだったけど、同じくらい好き。なんだろう。この人の小説は、展開するストーリーもさることながら、根底にものすごく優しくて温かい空気があって、それがもうたまらなく好きなのだ。天才過ぎる父とは心を通わせられないし、愛する妻とも口論ばかり。でも見守ってくれているような温かな視線があって、それがすごく心地よい。作者がほんとに優しい人なんじゃないか?なーんて、おバカな妄想。とにかくとても素敵な作品。次回作も翻訳されますように!てか第二作目はまだ翻訳されてないよね?お願いします木村さん!2012/03/09
Betty
15
スペインの作家。舞台もスペイン。前作『螺旋』でトキメキ注目作家の一人。国をあげて賞賛されている大物画家と息子の物語。息子の一人称で描かれポツポツと物語は展開している。突然、作品をオークションにかけると父親。美術館が落札後、父親が「不完全なので描きなおしたい」父親に翻弄される主人公。妻ともギクシャク。派手さはないが、何とも言えない独特な時間の流れを感じる。友人関係や両親との距離。いいですね。すべて読み終えると暖かく暫く余韻が残った。「螺旋」と同じく本棚に並べたい1冊。2012/04/10