出版社内容情報
1991年から6年間にわたり、米国アイダホ州で、オオカミの群れがくらすエリアにテント建てて寝起きし、観察をつづけた夫妻による記録。2人の記録はありのままのオオカミの姿を捉え、オオカミへの憎悪を生んだ根強い誤解を払拭し、全米の世論を動かすまでに至った。
本書では6年のあいだに2人が目にした行動や事件について、ときに他の研究事例を参照しつつ、温かな眼差しで綴られる。
各章ごとに、オオカミが仲間を思いやる心、チームワーク、遊び、他者への敬意、好奇心、群れの文化、弱者への慈しみなどについて、ソートゥース・パックや他の群れのエピソードを挙げて軽快に語っていく。
アルファのカモッツとチェムクをはじめ、ソートゥース・パックを構成するオオカミのキャラクターはみな魅力的で、まるで隣でオオカミたちがじゃれあっているような気分になるだろう。
人間も見習うべきオオカミの賢さと愛の深さに、本書を通じて触れることができる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
だまし売りNo
22
オオカミの群れが暮らすエリアで生活し、観察をつづけた夫妻によるノンフィクション。本書に描かれるオオカミの特徴は社会性である。動物の群れのリーダーは猿山の猿のように弱肉強食の支配者のイメージがあるが、本書のスタンスは異なる。リーダーの資質に攻撃性は無関係である。群れ全体の幸福を引き受けることは自分という意識を有している(74頁)。この通りならば支配と搾取の人間社会よりも進んでいる。2022/04/12
北風
13
オオカミって昔っから好きなんだけど、なんでだろう? と思ったら、子供の頃親がシートンのオオカミ王ロボの本をくれたんだった。その当時はアルファとかオメガとかなかったけど、ロボは明らかにαでブランカはメスのアルファだったんだな。意外と覚えてる。オオカミ王を読み返せば、作中の狼のいろんなことが読み解けそう。狼は鹿の王でも悪者扱いなんだよな。狼、仲間思いだよ。2022/02/22
ブチ
6
図書館の本。狼は血の繋がらない子供も育て殺さないそう。ライオンは子殺しするから男が女の連れ子殺しちゃうのも本能だから仕方ない。とか言ってる人に聞かせたい。なんで現地の人たちはそんなに娯楽としてオオカミを狩りたがり統計も無視してオオカミを悪者扱いするのだろう。他の本でオオカミの上下関係は動物園のような狭く囲われた環境でしか発生しないと書かれていたが作者はそうではない立場に立っているらしい。「オオカミが嫌われるのは、人間がとっくになくした美徳を持ちつづけているからかもしれない」2023/04/05
ぱせり
5
私たち人間がオオカミを悪者にするのは神格化と同じくらい極端だ。オオカミをことさらに憎悪、迫害してきたのは人間の側に理由がある。擬人化されているわけではないのに行動の様子を眺めれば、彼ら、私たち人間の集まりになんと似ているか。「人間はオオカミに自分の姿を映しだし、それを憎んでいるのだ」という言葉が心に残る。2022/05/01
ジュライ
4
オオカミのパックとともに6年暮らしたという、羨ましい夫婦によるドキュメンタリー。オオカミの家族愛の深さについて多くのページが割かれており、「シンデレラウルフ」とかドラマティックなエピソードも多く、学術的というより大衆向けの語り口。リーダーとして素晴らしい素質をもつアルファオスのカモッツを筆頭に、優しいマツィ、穏和なラコタなどのパック内の結びつきがあまりに眩しくて、後半はずっと鼻をぐすぐすさせながら読んでました。さらにラストの著者とオオカミの手のひらが優しく重ね合わせられてる写真、これだけで涙ぐんでしまう。2022/11/10