内容説明
風土と作品との深奥の契約を読み解く。「胎盤」へと原風景を訪れた小説全42編。
目次
第1章 国家の未来
第2章 山やまの秘奥
第3章 川の流れ模様
第4章 野に展開する陰影
第5章 海の輝きと波涛
第6章 町という迷宮
第7章 火と月
著者等紹介
中西進[ナカニシススム]
一般社団法人日本学基金理事長。文学博士、文化功労者、平成25年度文化勲章受章。日本文化精神史の研究・評論活動で知られる。日本学士院賞、菊池寛賞、大仏次郎賞、読売文学賞、和辻哲郎文化賞ほか受賞多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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あいくん
10
☆☆☆☆中西進さんが近代現代の名作小説42編の原風景をたどったエッセイというか評論文です。日本の近現代小説はこの国土の中にどんな胎盤をもっているのか中西さんは解き明かそうとしました。日本各地の文学の舞台を旅して、体感の感動を素直に語ったということです。志賀直哉「城の崎にて」、川端康成「古都」、司馬遼太郎「梟の城」、島崎藤村「夜明け前」、井上靖「しろばんば」、太宰治「富嶽百景」、菊池寛「恩讐の彼方へ」、有吉佐和子「紀ノ川」、宮本輝「蛍川」、伊藤佐千夫「野菊の墓」、新美南吉「ごんぎつね」、2019/05/08
れいまん
1
題名に惹かれて読んでみた。 本を読むとはここまで想像の翼を広げて多角的に考えるのだなとわかった事が収穫。2021/08/15
田中峰和
1
明治以降の作家が、風土を凝視することで風景を読み取り、それを小説の原風景としてどのように物語を構想してきたのか。実在する風土から産み出された物語は、現実を離れ作家自身の装置を創造しながら自立した舞台を展開する。風土と作品とを結ぶ概念を文学の胎盤と名付けた著者。近現代小説は、この国土の中にどんな胎盤を持っているのか。著者は山や川、野、海、町など日本の風土に根ざした42の名作の原風景を語る。漱石の「三四郎」が想う美禰子は都会と未来の象徴であり、故郷の母は過去の象徴。三四郎の心は近代化する日本そのもののようだ。2016/12/19
でろり~ん
0
合わなかったです。がっかり。カットとして使われている写真はどれも普段の風景でありながら幻想的で、加工してあるのかもしれないけれど、とても印象的で良かったです。その思わせぶりが上手くいっている感じでした。比して本文の思わせぶりは、押しつけがましくイヤな感じ。せっかく現地に赴いているにもかかわらず、トポスの力を云々するでもなく、現地に行く前から机上で思い描いた内容を書いているだけって印象でした。つまりアタマデッカチな文章を読まされたという感想。高名な人なんだろうけれど、残念。2016/11/24