内容説明
奈良が、もっと好きになる。大仏は、なぜ造られたのか。正倉院宝物は、なぜ生まれたのか。苦しみや悲しみを大きなやすらぎに変えてきた、奈良の物語は日本のたからもの。
目次
1 大仏さま、こんにちは
2 悲しみから立ち上がる
3 時を超える祈り
4 先人たちの物語
5 あまねく、仏教愛
6 博物館の日々
7 大和ごころのありか
8 共振
著者等紹介
西山厚[ニシヤマアツシ]
帝塚山大学文学部文化創造学科教授。徳島県鳴門市生まれの伊勢育ち。京都大学大学院文学研究科博士課程修了。奈良国立博物館で学芸部長として「女性と仏教」など数々の特別展を企画。奈良と仏教をメインテーマとして、人物に焦点をあてながら、さまざまなメディアで、生きた言葉で語り、書く活動を続けている。昨年の春から、現職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
シナモン
135
良かった。薬師寺のこととか、正倉院展の始まりとかパンフレットに載ってないようなエピソードが優しい言葉で語られていて勉強になったし心に残った。小さい子どもたち、なんて素直でかわいらしいんだろう。ふれあいの場面にじーんときた。「元気いっぱい幸せいっぱいの人が仏像を造ったりはしない。…すべての仏像の向こうに、その前で切なる祈りを捧げたそれぞれの時代の人々がいる」ますます奈良が好きになった。2021/11/08
Shoji
63
毎日新聞奈良版に連載された「奈良の風に吹かれて」という118話のとてもハートフルなエッセイです。著者は仏教史の先生で大学で教べんをとられたり、奈良博で学芸のお仕事をされたご経歴でいらっしゃいます。大変なご苦労をなされた高僧や為政者の話、純真な心を持つ小さなお子さんの話、仏法や仏像の由来など、どれも心を打つお話ばかりです。帯には「奈良が、もっと好きになる」と書かれています。奈良はとてもいい所だと改めてそう思いました。2017/12/17
井月 奎(いづき けい)
54
いやあ、困った本です。奈良に行きたくなっちゃいます。奈良のなんというか、芯に清いものがあるような空気感が思い出されて、さらには裏話と言うか、知らない話、お寺の由緒やその土地、お寺に関わる人たちの話も実に良いのです。人の手の、心のほのかな温かさを感じます。でもしかし奈良と言うのは清いだけではない、人の本質も見ようとすれば見える、そんな怖いところでもあるのですけれども、そんなところだからこそ行きたいのです。仏様に語りかけたいのです。いろいろと思い出させますねえ、いやあ、本当に困った本です。2020/01/14
ぶんこ
54
仏像に心動かされるようになり、ゆっくりと奈良のお寺巡りをしたいものと奈良の本を読むようにしています。こちらの本には「聖武天皇と光明皇后」への著者の愛が溢れていました。ご夫婦仲の良さにあやかりたいと思ったり、奈良時代が福祉に力をいれていたというのも驚きでした。仏様の胸の前の右手は「だいじょうぶ、心配しなくていい」膝の左手は「必ず迎えに行く」という気持ちを表しているそうです。とても心に響き、同じ気持ちを思い浮かべて両手を同じようにしてみると、ジ〜ンとなりました。文章が分かり易く時々ウルウルしながら読みました。2017/06/20
trazom
52
五年前の本を、どうして再読したいと思ったんだろう。新型コロナ騒動で、棘のある言葉や心無い言動が溢れている今だから、西山先生の優しさに触れたかったのかもしれない。「私は、悲しんでいる人、苦しんでいる人に親近感を持つ。全く何の力にもなれないのに、すぐに親近感を持ってしまう」「歴史の中の人々でも、聖武天皇の苦しみ、光明皇后の悲しみに心ひかれる。母を亡くした叡尊や忍性の悲しみに心が震える」「私は他者の悲しみに強く共振する」…そんな著者が語る奈良は、本当に深くて温かい。為になり、そして心が洗われる。とてもいい本だ。2020/04/30